大阪万博で「中国製EVバス」不具合頻発! 自動運転未熟&補助金制度の甘さが露呈――業界構造の歪みを問う

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大阪万博で注目を集めたEVバスは、190台が導入される一方、自動運転トラブルや補助金制度の甘さが露呈した。国内生産能力と品質管理の強化が、日本の公共交通EV普及のカギとなる。

地方事業者の苦悩

 国は脱炭素とEV推進の旗印として、大阪万博を契機にEVバス導入を急いでいる。純粋な国産EVバスとなると、ほぼいすゞのエルガEVしか選択肢がない。補助金制度ではZAC-LV828L1に2775万円の補助が出る。実勢価格は約6700万円で、バス事業者は約4000万円を自己負担する必要がある。

 筆者の取材では、大都市圏の事業者でも

「輸入EVからエルガEVに切り替えたい」

と考えるところは少なくない。理由は

・メンテナンス支援体制の充実
・長年の取引による信頼感

である。日産ディーゼルのバス事業撤退以降、国内メーカーは事実上、いすゞと日野・三菱ふそうの2勢力になった。多くの事業者がエルガEVにシフトしており、EVも同様の考えが広がっている。

 しかし、現状では生産能力、つまりJ-BUSのラインひっ迫が懸念される。一方で、中国メーカーの短納期・低価格への依存が続く可能性も否めない。大都市圏以外の事業者には、EVモーターズ・ジャパンの10.5m大型路線バス、5000万円前後の価格は魅力的に映る。BYDのK8は実勢で4000万円を切る勢いだ。

 多くの事業者にとっては、品質よりも

「数を揃えること」

が優先される。地域にEVバスを投入して社会貢献を示すことが重要になる。地方都市の事業者は、エルガEVの品質を高く評価するが、持ち出しが大きく導入が難しいと感じている。BYDのように日本市場に合わせた改善や信頼性重視の低価格路線を採るメーカーが出ても、業界の国内メーカー信奉は依然強い。

 国内メーカーがEVバス市場を本格的に担うことに期待はある。しかし現状の技術力と供給体制を考えると、エルガEV一択になるのはやむを得ない状況だ。

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