公共交通は誰のものか? 議論のヒマ無し、官民連携「競争から共創」急げ【牧村和彦博士の移動×都市のDX最前線#6】

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JR西日本が2022年4月、不採算17路線の収支を初公表し、世間に衝撃を与えた。公共交通を民間が担う危うさを露呈した格好だが、英国など海外は「民から官」へ戻す方向に舵を切りつつある。

市民の対話でバス運賃を決定

新しい交通サービスを市民との対話で進める英国マンチェスターの「Bee Network」(画像:Transport for Greater Manchester)
新しい交通サービスを市民との対話で進める英国マンチェスターの「Bee Network」(画像:Transport for Greater Manchester)

 マンチェスターで作成された「Bee Network」という統合ビジョンは、路線バス、トラム(次世代路面電車)、自転車、歩行者交通の統合を進めていくものであり、2040年のビジョン実現を具現化している点で注目だ。

 ちなみにマンチェスターの象徴は蜂であり、蜂(Bee)の文字と交通ネットワーク(Network)を組み合わせて、「Bee Network」が市民向けのキャッチフレーズ、計画の名称になっている点もわかりやすい。市民には、「○○市公共交通網形成計画」と言っても伝わらず、欧米では、計画を象徴するネーミングが付けられるケースが一般的である。

 まずは2024年までに路線バスとトラム、自転車の運賃統合を目指しており、ロンドンのように1日の上限運賃(異なる手段を乗り換えても運賃が日本のように増加しない制度)を導入する計画だ。

 市は2021年10月から11月の1から月間、数千人の市民との対話、意向調査を各地で進めてきた。その甲斐もあり、2022年から5年間で10億7000万ポンド(日本円で約1700億円)の予算が確保され、さらには路線バスの上限運賃の導入が決まったそうだ。今後、大人は2ポンド(約320円)、子どもは1ポンド(約160円)となる。

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