公共交通は誰のものか? 議論のヒマ無し、官民連携「競争から共創」急げ【連載】牧村和彦博士の移動×都市のDX最前線(6)
JR西日本が2022年4月、不採算17路線の収支を初公表し、世間に衝撃を与えた。公共交通を民間が担う危うさを露呈した格好だが、英国など海外は「民から官」へ戻す方向に舵を切りつつある。
みんなの公共交通は誰のものか

マンチェスターは、地方自治体が公共交通の運賃、時刻表、サービスを設定するロンドン以外の最初の都市になり、行政が都市圏全体の交通サービスの計画、経営を主導していくことになる。
リバプールでも同様の「民から官へ」の流れが始まっていると聞く。1980年代にいったん民営化した交通事業は40年近くが経過し、特に大都市において、運賃の上昇、労務単価の低下、サービス向上の停滞化など、民間事業者だけでは立ちゆかなくなり、新型コロナウイルス感染症(covid-19)も大きく影響した。
英国では、民から官に戻す方向に舵(かじ)を切りつつある(ちなみに、高速道路改革の柱であった英国のハイウェイ・エージェンシーも、民営化した後、結局公営に戻している)。
振り返ってわが国はどうだろうか? 2022年4月からの減便や路線廃止の報道が連日相次ぎ、やむ様子はない。さらには運賃値上げラッシュが始まろうとしている。
公共交通を公営で運営してきた地域においては、民営化の議論も活発だ。すべての政策が先進諸国とは真逆に進んでいる状況を誰も止めることができない。公共交通は電気、ガス、水道と同じ、市民生活になくてはならないものである。
公共交通は誰のものか? 議論している時間、猶予(ゆうよ)はもう残されていない。一刻も早く、地方都市では、官民連携、共創による交通経営、具体の制度設計に踏み出すべきだ。