公共交通は誰のものか? 議論のヒマ無し、官民連携「競争から共創」急げ【連載】牧村和彦博士の移動×都市のDX最前線(6)

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JR西日本が2022年4月、不採算17路線の収支を初公表し、世間に衝撃を与えた。公共交通を民間が担う危うさを露呈した格好だが、英国など海外は「民から官」へ戻す方向に舵を切りつつある。

英国で始まる「民から官」への新潮流

 1985年のマーガレット・サッチャー首相による規制改革により、英国では、公共交通の民営化を進めてきた。規制緩和後には、ロンドン以外の他の多くの地方都市では民間事業者が運行を担ってきた。

 しかし、ここに来て民間運営の地域公共交通を行政が一元的に統括する流れが、大都市のマンチェスターやリバプールから始まっている。

 300万人が居住するマンチェスターは、30の異なる交通事業者が存在し、150の異なるチケット、数千を超える単一運賃が存在する大都市圏だ。

 グレーターマンチェスターが2040年を目標とした将来交通ビジョンを2021年1月に策定。2038年までにカーボンニュートラルを実現、自動車の利用割合を現状の61%から2040年には50%とする目標が掲げられた。そのための短期的な戦略の一つのキーワードが、「統合」だ。

「統合」には、運賃の統合、路線の統合、外観等の統合、地域の統合、サービス全体の統合など、事業者間の連携の程度により様々な統合形態が存在する。

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