JR西、赤字路線公表の衝撃 いま再び問う「国鉄分割民営化」は本当に正しかったのか?

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JR西日本は11日、路線の維持が困難としている関西、北陸、中国地方などの赤字収支を初めて公表した。“第二の国鉄改革”の声も上がる昨今、今後はどうなるのか。

JR西日本が収支を公表したワケ

ローカル線のイメージ(画像:写真AC)
ローカル線のイメージ(画像:写真AC)

 JR西日本は2022年4月11日、同社単独では路線の維持が困難としている関西、北陸、中国地方などの17路線30区間の収支を初めて公表した。公表したのは、コロナ前の2019年度の輸送密度(1kmあたりの一日平均利用者数)が2000人未満の区間だ。

 赤字額がもっとも大きかったのは、山陰本線の出雲市~益田間の34.5億円。これに紀勢本線の新宮~白浜間の28.6億円、小浜線の敦賀~東舞鶴間の18.1億円が続いた。JR西日本では

「廃線を前提としない」

としつつも、存続には公的負担が必須とのスタンスを明確にしている。

 同社と同じく赤字ローカル路線を抱えるJR各社では、これまでも収支を公表することで

・赤字路線の合理化
・公的支援などを求める動き

を取っている。

 JR北海道では2015年11月に初めて路線収支を公表した。既に財政悪化が著しかった同社では、公表を前に留萌本線の留萌~増毛間の廃止を決定。赤字路線での普通列車の減便など、不採算路線への対策を進めていた。この公表は、赤字路線廃止に向けた沿線自治体への強力な説得材料となり、道内では路線の廃止が続いている。

 JR四国でも2019年3月に収支の公表を実施。赤字額の大きい愛媛県と高知県を結ぶ予土線の廃止案や、バス転換に向けた議論も行われている。

 これら路線の赤字原因は、いうまでもなく

・モータリゼーションの普及
・過疎化の進行

である。ここに、コロナ禍による利用者減少が追い打ちをかけている。

 JR西日本では、新幹線や京阪神の路線収益でローカル線の赤字を埋める手法で路線を維持してきており、収支も黒字だった。ところがコロナ禍によって同社の赤字幅は増大。2021年3月期連結決算は2332億円の赤字となり、2022年3月期も赤字を見込んでいる。

 そこで同社は、内部留保(企業の儲けの蓄え)が尽きる前に公的負担による路線維持を提示したと見られる。

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