公共交通は誰のものか? 議論のヒマ無し、官民連携「競争から共創」急げ【連載】牧村和彦博士の移動×都市のDX最前線(6)

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JR西日本が2022年4月、不採算17路線の収支を初公表し、世間に衝撃を与えた。公共交通を民間が担う危うさを露呈した格好だが、英国など海外は「民から官」へ戻す方向に舵を切りつつある。

JR西「赤字路線」 初公表が与えた衝撃

フランス・ルーアンのBRT路線。外見からはどの民間会社が運行しているか分からない(画像:牧村和彦)
フランス・ルーアンのBRT路線。外見からはどの民間会社が運行しているか分からない(画像:牧村和彦)

 よく専門家やジャーナリストから「欧米の都市内公共交通は行政が運営している」という話を聞く。これは正確ではない。行政が計画や経営を担い、実際に運行しているのは民間企業というのが一般的だ。車両の外見は同じカラーで同じ運営事業体のロゴ、バス停も統一され、どの会社が運行しているかはぱっと見、わからないものが多いのが実情だ。

 昔パリ交通公団(RATP)を訪問した際に、都市圏のバスの車体や方向幕、停留所のデザインは自分たちでルールを決め、それに従う民間事業者には財政支援をし、その予算は交通違反金などの取り締まりによる財源と聞いて驚いたものだ。

 例えばフランス北部のルーアン都市圏(約50万人)の場合、CREAという都市共同体が公共交通機関、駐車場、カーシェアリング、自転車シェアリングなどを所管しており、都市圏の交通ネットワークの計画や運行頻度、運賃などの計画を担っている。運営はコンセッション方式により民間事業者に委託し、複数社(2015年当時で5社)が担っている。

 また、グローバルオペレータと呼ばれる運営のプロフェッショナル、民間企業の存在も忘れてはならない。

 ケオリス社やトランスデブ社のような運行の計画や乗務員の管理や教育含めた高品質なサービスを提供する事業体の役割は年々高まっており、デジタル化や自動化、グリーンの推進役でも世界を先導している。

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