街なかから消えゆく「歩道橋」 古き良きデザインが物語る、目指すべき「道路の未来」とは

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インダストリアルデザイナーのパイオニアとしても知られる柳宗理から始まった「歩道橋を美しくする」取り組みが現在に問いかけるものとは。

耐用年数を迎える各インフラ

現在も地域住民に親しまれる大野美代子デザインの蓮根歩道橋(画像:小川裕夫)
現在も地域住民に親しまれる大野美代子デザインの蓮根歩道橋(画像:小川裕夫)

 近年、高度経済成長期に整備された道路や橋梁、上下水道、ガス管、電気設備など、私たちの生活に欠かせないインフラが一斉に耐用年数を迎えている。

 老朽化したインフラの多くは更新されるのが一般的だが、経済が右肩上がりで成長していた高度経済成長期に整備されたインフラは膨大な数に上っている。少子高齢化・人口減少などにより税収増の見通しは立っていないこともあり、一部のインフラは更新されないまま使命を終える。そんな可能性も示唆されている。

 これらを維持するには増税しかない。しかし増税で賄うにしても、住民から賛同を得られにくい。

 インフラが一斉に更新を迎えることを懸念し、行政は2000年代初頭からインフラの長寿命化を進めてきた。インフラの長寿命化は読んで字の如く、インフラを長持ちさせるための取り組みだが、その具体的な方策は、なによりも日頃の点検・補修をこまめにすることが最重要とされる。

 こまめに点検・補修すると、そのつど費用が発生する。財政規模が小さな自治体では、インフラを維持するための固定費は重い負担になる。毎年のように補修・点検をしていたら、とても行政は回らない。

 行政の意識は少しずつ変わっているものの、それでもインフラ整備は維持・管理よりも新規につくることが優先されやすい傾向にある。なぜなら、住民から「ほかの地域は道路がきちんと整備されたのに、こちらは手付かず。早急に整備してほしい」といった要望が寄せられるからだ。

 行政は、こうした声を無視できない。さらに、住民の声がダイレクトに響くのが議員だ。特に、その地域を地盤とする議員は住民の声を無視できない。議員にとって住民のリクエストに応えることは責務でもあるが、それは票につながるという自身にとってもメリットのある話だ。つまり、議員にとっては地域のインフラを整備するように役所に掛け合うことは自身の選挙を有利にする行為でもある。

 議員の声を行政は無視できないという事情もあり、住民のインフラ整備を求める声は議員を介して役所へと届けられる。

 ほかにもさまざまな事情が絡み合い、既設インフラの点検・補修は後回しにされやすい。いまだ日本のインフラ行政が新しくつくることに主軸を置いているのはそのためだ。
似たような理由で、日本のインフラ行政は長らく質より量を重視する傾向が強かった。たくさんの地域につくった方が、幅広い地域から票を集められるからだ。