入江を猛スピードで走行 知床観光船事故の背景にあった各社の「過熱サービス」
4月23日、北海道の知床半島の沖合で乗員・乗客26人が乗った観光船の行方がわからなくなった。事故原因や遭難した観光船の動向が次々と明らかになっている。同船は、海が荒れているため出港をやめたほうがいいと忠告されたという。
観光客増加は「世界自然遺産」登録以降
2022年4月23日、北海道の知床半島の沖合で乗員・乗客26人が乗った観光船の行方がわからなくなった。一夜が明けた24日には10人の死亡が確認されるなど、既に大きな惨事となっている。
報道では事故原因や遭難した観光船「KAZUI(カズワン)」の動向が次々と明らかになっている。報道では、同船が海が荒れているため出港をやめたほうがいいと忠告されたにも拘わらず出港したこと(『朝日新聞デジタル』2022年4月22日付)なども報じられている。
またSNS上では、同船がもともと海の穏やかな瀬戸内海の定期航路で用いられていた船ではないかという指摘や、事故前から船首に亀裂が入ってる様子が撮影されていたなどという不明確な情報も流布している。
事故原因の究明は今後の調査に委ねられるが、現時点で資料を探すとわかるのは、この観光ルートが極めて危険なものだったということだ。
北海道東部の斜里町と羅臼町にまたがる、手つかずの大自然が残る知床半島で、観光客が急増したのは、2005(平成17)年7月に「世界自然遺産」登録が決定してからだ。
当時、観光客が減少していた斜里町と羅臼町ではこれ以降、観光客が増えた。ピークは登録された2005年の235万人で、以降は「不振」ともされるが、依然として年間100万人を超えている。
陸路では人の進める道のない知床半島で、観光の目玉となっていたのは、観光船に乗って沿岸の絶景やヒグマなどの野生動物を見て楽しむことだ。世界自然遺産登録の時期には観光客の急増をあてこんで、参入する業者が急増した。
そうした業者が観光船として導入したのが、今回遭難した「KAZUI」のような20t未満の小型船だった。