トラック運転手の「待遇改善」は可能か? サービス労働が跋扈する物流業界、荷役作業からの解放目指せ
トラックドライバーの待遇改善が喫緊の課題となっている。賃金は所定内では平均的な労働者よりも2~3割低く、長時間の残業も許されない。荷主に対して運送会社の交渉力が弱いという問題もある。
労働時間を把握しづらい職種
私たちがお店やインターネット通販などでさまざまな商品を手に入れられるのは、商品を運ぶ物流が機能しているからだ。しかし近年、この物流を支えるトラックドライバーに大きな負荷がかかっており、その待遇の改善が喫緊の課題となっている。今回紹介する首藤若菜『物流危機は終わらない』(岩波書店)は、この物流の現場の危機を「労働」の観点から掘り下げた本になる。
トラックドライバーの待遇がなかなか上がらない背景には、
・労働条件に関する決まり
・仕事の特性
・顧客の要望
など、さまざまな要因が存在する。本書はその多面的な要因を分析しながら、トラックドライバーの待遇改善の手がかりを探ろうとしている。
本書によると、「月末1週間の就業時間が60時間以上の雇用者の割合」は「運輸業、郵便業」(18.1%)が「教育、学習支援業」(11.1%)を引き離して1位である。また、週間就業時間は全産業平均が45時間になのに対してトラックドライバーは54時間、月間就業時間では全産業平均186時間に対して、トラックドライバーは225時間と、週10時間、月40時間ほど長くなっている。
政府は、ドライバーの長時間労働が交通事故をもたらす原因だとして以前から問題視しており、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」という国の基準を出している。
トラックドライバーは、運転時間以外にも
・荷役時間(荷物の積み込み・積み卸しの時間)
・手待ち時間(現地に到着してから荷物を受け取ってもらうまでの時間)
・休憩時間
があり、労働時間の把握が難しい。