街なかから消えゆく「歩道橋」 古き良きデザインが物語る、目指すべき「道路の未来」とは

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インダストリアルデザイナーのパイオニアとしても知られる柳宗理から始まった「歩道橋を美しくする」取り組みが現在に問いかけるものとは。

歩道橋にベンチを設置した大野美代子

蓮根歩道橋の上に設置されたベンチ。植栽も配置され、ちょっとした休憩スポットになっている(画像:小川裕夫)
蓮根歩道橋の上に設置されたベンチ。植栽も配置され、ちょっとした休憩スポットになっている(画像:小川裕夫)

 高度経済成長期、世間ではマイカー所有者が増加し、都市部では渋滞が慢性化していた。また、交通事故も問題視されていた。

 これらの解決策として歩車分離が図られるが、歩道橋も一環とされた。行政は歩道橋をたくさんつくる必要性に迫られていたが、大野は歩道橋にも美しいデザインが必要であることを主張。

 蓮根歩道橋は3方向から道路を横断できるような構造で、その中心部はベンチを配置。また、ベンチに座って休憩した際に心がやすらぐように植栽を配置するといった工夫もされている。それまでの歩道橋は、単なる歩道の延長線としか考えられていなかった。そのため、歩道橋にベンチを設置することは前代未聞だった。

 そのデザインもさることながら、蓮根歩道橋はコンセプトが素晴らしく、土木学会の田中賞を受賞。以降、大野は橋梁デザイナーとして活躍し、田中賞やグッドデザイン賞、都市景観大賞を繰り返し受賞した。

 芸術作品と錯覚するようなデザインが目を引き、インフラとして機能しなければ本末転倒だろう。しかし、デザイナーたちは機能性とデザイン性を両立させるべく知恵を絞り、何度も試行を重ねる。

 こうした英知によって生み出された交通インフラは住民からも愛着を抱かれる。実際、蓮根歩道橋は2022年現在も地域住民に親しまれるインフラとして供用されている。

 とはいえ、それは数少ない事例にすぎない。時代とともに価値観が変わり、求められるものも変化する。昨今、バリアフリーの観点から歩道橋は忌避されている。そのため、全体的な傾向として歩道橋の新設は少なく、既設の歩道橋は更新されずに撤去される流れにある。

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