宇都宮LRT「500万人突破」が示す地方都市の逆襲──なぜ岐阜・京都で“路面電車復活”が急浮上したのか?

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宇都宮ライトレールの成功が全国の地方都市に波及し、2040年までに那覇市や京都市でLRT導入が具体化している。人口減少・高齢化の中、交通網再編と都市再設計の切り札として、初年度500万人超の利用実績が示す多面的な経済効果と環境負荷軽減に期待が高まる。

激化する都市間競争の行方

LRT(画像:写真AC)
LRT(画像:写真AC)

 宇都宮LRTの成功は全国の地方都市に波及し、LRT導入検討の動きを加速させている。例えば沖縄県那覇市では、2040年度の開業を目指す2路線のLRT構想が進んでおり、既存のモノレールやバスとの連携も視野に入れている。和歌山市でも、中心市街地の再活性化を目的に、BRTに代わってLRT導入を本格的に検討し始めた。宇都宮が「鉄道ゼロ」から新設した初のモデルケースであることは、地方都市にとって大きな励みとなっている。

 一方で、LRT導入は

「早い者勝ち」

の様相を呈している。資材価格の高騰や建設人材の不足が進み、国の補助枠をめぐる都市間競争が激化している。建設費用は数年単位で上昇し、技能者の高齢化や人件費の増加も重なっている。そのため、遅れれば遅れるほど事業リスクは増大する状況だ。

 このため自治体には、今動くべきか、慎重に見極めるかという戦略的判断が求められている。LRT導入は交通整備ではなく、都市の将来像と一体化した生き残り戦略であり、いまや政策競争の最前線に位置している。人口減少と高齢化が進むなか、日本の地方都市は

「選ばれるか、見捨てられるか」

という厳しい選別の時代を迎えている。その岐路となるのが、誰もが安心して移動できる移動インフラの質である。LRTはバリアフリー性や環境性能、定時性に優れ、マイカーに頼らず生活できる都市を実現するための有力な手段だ。

 しかし、LRTは制度設計、都市構造、市民合意の三つの条件がそろって初めて成功する。この意味でLRT導入は、都市の将来像を描き、それを実現するための総合力、すなわち「都市運営能力」を問う判断基準でもある。

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