宇都宮LRT「500万人突破」が示す地方都市の逆襲──なぜ岐阜・京都で“路面電車復活”が急浮上したのか?
宇都宮ライトレールの成功が全国の地方都市に波及し、2040年までに那覇市や京都市でLRT導入が具体化している。人口減少・高齢化の中、交通網再編と都市再設計の切り札として、初年度500万人超の利用実績が示す多面的な経済効果と環境負荷軽減に期待が高まる。
消滅可能性896自治体の危機
日本の地方都市は、
・人口減少や高齢化
・都市構造の空洞化
・交通基盤の崩壊
といった複合的な課題に直面している。とくに2040年には、全国896自治体が「消滅可能性都市」に該当すると予測されており、地域社会の持続性そのものが厳しく問われている。
こうした状況のなかで進んだモータリゼーションは、郊外への大型商業施設の集中を招いた。その結果、かつて賑わいの中心だった市街地は空洞化の傾向を強めている。空き店舗の増加や歩行空間の衰退が続き、都市の魅力は大きく損なわれている。これにより、地域内の回遊性も阻害され、住民や観光客の流動性が低下している。
また、自家用車への過度な依存は交通渋滞や環境負荷、事故リスクの増加といった深刻な副作用をもたらしている。加えて、高齢者や子ども、免許返納者といった交通弱者の移動の孤立を深刻化させている。日常生活に不可欠な移動手段を持たない層が取り残される状況は、社会基盤の劣化を象徴している。
さらに、地方における路線バスへの依存も限界に達している。2000(平成12)年から2022年までの22年間で、廃止されたバス路線の総延長は約2万733kmに及ぶ。これは、地域の足が文字通り消失しつつあることを意味する。
こうした負のスパイラルは自家用車依存をさらに強め、都市の縮退と地域の孤立を加速させている。そこで、LRTはこの悪循環を断ち切る有効な手段として注目されている。都市空間の再構築と公共交通の信頼性回復を実現するための戦略的な投資として、再び期待が高まっているのだ。