千葉県で「データセンター反対運動」が起きている根本理由――駅前一等地の計画はなぜ住民の怒りを買ったのか?
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デジタル社会の「縁の下の力持ち」データセンター。日本市場が4兆円超に拡大するなか、千葉県印西市では市税収の51%を占める一方で、駅前開発を巡り住民の反対が噴出。なぜ、不可欠なインフラが「街の不協和音」となるのか。その深層に迫る。
印西市に集まる巨大データ拠点

国内でデータセンターの建設が加速している。データセンターとは、膨大な情報を保管・処理・管理するための専用施設であり、インターネットやクラウドサービスの根幹を支えるインフラだ。施設内にはサーバー、ネットワーク機器、ストレージ装置などが集中的に設置され、これらを365日24時間体制で安定稼働させるため、電源供給、冷却設備、耐震・防火構造、セキュリティ体制などが整備されている。Google、Amazon、マイクロソフトのほか、国内ではNTTやソフトバンクが自社・顧客向けに運営する。SNS、動画配信、オンライン会議、電子決済、クラウドストレージなど、私たちの生活に不可欠なサービスの裏側では、こうしたデータセンターが膨大な演算・通信処理を担っている。近年は生成AIやIoTの台頭で、依存度がさらに高まっている。目立たない存在ではあるが、現代の情報社会を支える「縁の下の力持ち」と言える。総務省「令和6年版情報通信白書」によれば、日本のデータセンターサービス市場は2022年に2兆938億円となり、2027年には4兆1862億円へ拡大する見通しだ。この成長市場の先陣を切って注目されたのが、千葉県北西部の印西市である。
・都心へのアクセス
・強固な地盤
・割安な土地
といった条件に恵まれた同市では、急速にデータセンターの集積が進んだ。
しかし現在、千葉ニュータウン中央駅前の商業地区における新たな建設計画をめぐって、住民の反対が起きている。
「駅前に人が出入りしない施設が建ってよいのか」
といった声が市に100件以上寄せられているという。データセンターは本当に地域の発展に資するのか。あるいは、都市機能との不協和を生む存在なのか。社会インフラとしての役割と地域との共存が、いま改めて問われている。