千葉県で「データセンター反対運動」が起きている根本理由――駅前一等地の計画はなぜ住民の怒りを買ったのか?
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デジタル社会の「縁の下の力持ち」データセンター。日本市場が4兆円超に拡大するなか、千葉県印西市では市税収の51%を占める一方で、駅前開発を巡り住民の反対が噴出。なぜ、不可欠なインフラが「街の不協和音」となるのか。その深層に迫る。
用途不明施設の不安感
印西市では2025年に入り、住環境や健康被害への懸念から住民有志が市議会に新規建設反対の署名と陳情を提出した。これを受けて藤代健吾市長は自身のX(旧ツイッター)で、
「この場所には、こうした地域の状況にふさわしい施設が整備されるべきであり、それはデータセンターではないと考えています」
と異例の反対表明を行い、注目を集めている。データセンター誘致で税収を増やしてきた自治体の市長が公然と反対を示したのは異例である。
全国的にもデータセンター建設に対する住民の懸念は広がっている。2023年には千葉県流山市で住民の強い反対により建設計画が中止された。
反対理由の多くは、従来の工場や産廃処分場のような有害物質の排出や汚染が立証された「旧来型の公害」とは異なる。むしろ近年の反対運動は、
「人が出入りしない」
「用途が見えにくい」
「生活圏内に無機質な巨大施設が建つ」
といった施設の性質に対する理解不足から生じる懸念が大きい。データセンターは外観上の稼働感が乏しく、空きビルのように見えるため、周辺住民の間で
「何が行われているかわからない」
こと自体が不安の種となっている。印西市で問題視されているのは、予定地が地域の中心である千葉ニュータウン中央駅前のイオンモールに隣接した駐車場跡地であることが大きい。この立地ゆえに、日常生活に不可欠なインフラであるにもかかわらず、その恩恵が実感しにくい。さらにイオンモール隣接ということから将来的に商業施設が建つとの漠然とした期待もあり、それが反発を強めている。