千葉県で「データセンター反対運動」が起きている根本理由――駅前一等地の計画はなぜ住民の怒りを買ったのか?
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デジタル社会の「縁の下の力持ち」データセンター。日本市場が4兆円超に拡大するなか、千葉県印西市では市税収の51%を占める一方で、駅前開発を巡り住民の反対が噴出。なぜ、不可欠なインフラが「街の不協和音」となるのか。その深層に迫る。
駅前立地に潜む政策判断の誤算

反対問題の核心は、立地の特殊性にある。これまで印西市内のデータセンターは住宅地から離れた場所に建設されてきた。しかし今回は、前述のとおり、千葉ニュータウン中央駅前という商業地に建設予定地が設定された。これまでとまったく異なる土地利用である。
事態を複雑にしているのは、当該エリアが都市計画上、商業地域に指定されている点だ。本来は商業施設や業務施設の立地が想定されたエリアであり、データセンターの建設は計画通りの用途に沿ったものである。
一方で、近接するマンション群こそが、本来の土地利用の枠組みから逸脱していた。事実、マンションの北側には第一種住居地域、西側には第二種住居地域が広がっており、住環境を重視するならば、住宅はそちらに集中すべきだった。
印西市の失策は、将来的な用途の衝突リスクを見通せないまま、商業地域への住宅建設を許可した点にある。結果として、
「住民と産業施設が対立する構図」
を生んでしまった。こうした都市計画の歪みの背景には、千葉ニュータウン開発の迷走がある。当初の構想では34万人規模のニュータウンを目指していたが、人口は伸び悩み、一時はゴーストタウンともやゆされた。
計画が頓挫するなか、行政は人口確保を最優先課題とし、整合性を欠いた土地利用が許容されるようになった。長期的な都市計画よりも、目先の転入促進が優先された。その象徴が、商業地域へのマンション建設である。
本来ならば用途に応じたゾーニングが守られるべきだった。しかし現実には、その場しのぎの許可が繰り返された。その結果、いま住民とインフラの利害が正面衝突するという構図が生まれている。