熊本県、なぜ路線バス「共同経営」は失速したのか──2434万人で初の前年度割れ、制度限界と人口変動の深層とは

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法改正から4年、路線バスの共同経営は全国に広がりつつある。熊本では5社体制によるモデルケースが生まれたが、2434万人と利用者数は目標未達。人口減少や生活様式の変化、2024年問題が重なる中、公共交通再編の真価が問われている。

共同経営とカルテルの狭間

路線バス(画像:写真AC)
路線バス(画像:写真AC)

 モータリゼーションの進行により、日本の地域公共交通は深刻な危機に直面している。特に、運賃収入の6~8割がドライバーや整備士などの人件費に充てられる構造や、ドライバー不足の補填が困難である現状を考慮すれば、運行本数を抑制するのは経営判断として自然な流れである。

 都市部では複数の路線バス事業者が混在し、同じ区間で並行運行するケースが目立つ。こうした状況では、幹線部での運行を相互に調整して本数を減らし、代わりに枝線(主要な幹線から分岐している比較的短距離の路線)の維持に注力する戦略が検討されて然るべきだ。一方で、利用者の視点から見ると、路線の重複は

・運賃の違い
・運行時間帯の競合

といった不便を生じやすい。こうした課題を解決する手段として「共同経営」が浮上する。共同経営とは、複数の事業者が経営資源や運営方針を共有し、一体的に事業を運営する形態を指す。路線バス業界では、運賃設定や運行ダイヤ、路線計画を事業者間で協調・調整し、過度な競争を回避することを目的とする。これにより、重複路線の削減や資源の最適配分が可能となり、利用者にとって利便性向上やサービスの安定化が期待される。

 しかし、バス事業者同士が運賃やダイヤ、路線構成を調整することは、独占禁止法上の「カルテル(不当な取引制限)」に該当するとする法解釈が長らく存在した。特に、こうした調整が市場への新規参入を阻害する可能性が指摘され、市場競争の阻害要因とみなされてきた。

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