熊本県、なぜ路線バス「共同経営」は失速したのか──2434万人で初の前年度割れ、制度限界と人口変動の深層とは

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法改正から4年、路線バスの共同経営は全国に広がりつつある。熊本では5社体制によるモデルケースが生まれたが、2434万人と利用者数は目標未達。人口減少や生活様式の変化、2024年問題が重なる中、公共交通再編の真価が問われている。

路線バス事業者間の格差

路線バス(画像:写真AC)
路線バス(画像:写真AC)

 先に挙げた国土交通省認可の共同経営事例を見ると、熊本のケースでは共同経営推進室に熊本県や熊本市からもスタッフが出向して関与している。他の事例では、沿線地域行政の関与は薄く、基本的に路線バス事業者同士、あるいは路線バス事業者と鉄道事業者の協働体制である。地域の公共交通計画を考える上で、沿線地域行政の関与は望ましい解といえる。

 しかし一方で、経営が厳しい事業者側が

「行政に依存するリスク」

も存在する。また、行政の管理志向が強まれば、柔軟な共同経営に支障を来す恐れもある。柔軟な協調型の運行と統合的な管理の境界線をいかに引くかが課題となる。交通行政が共同経営に参画すると、こうしたリスクも想定される。熊本のように共同経営推進室の設置や行政参画、データ経営は妥当だが、リスクにも留意すべきである。

 今回の熊本の単年度の利用者減少をどのように位置付けるべきか――。一時的な停滞なのか、構造的な転換点なのか。ここに来て「2024年問題」が顕在化し、全国の路線バス事業者を苦しめている。ドライバーや整備士の不足により、事業者間で格差が生じることも十分に考えられる。全国の路線バス事業者では

・人員確保に戦略的に取り組む事業者
・そうでない事業者

に二極化しつつある。共同経営に参加する事業者間でリソースに格差が出ると、不協和音が生じる可能性も高い。もちろん、プールした運賃配分で努力する事業者にインセンティブを与えれば解決するかもしれない。

 しかし共同経営の観点からは、参画事業者の“落ちこぼれ”を出さず、全体最適を目指す必要がある。モータリゼーションやワークスタイルの変化、「2024年問題」などを踏まえ、今後の事業計画を検討しなければならない。路線維持優先か需要喚起策の刷新か、オンデマンドシステム導入か。筆者は、厳しい環境を前に路線バス事業のシステム再編集の時期と考えている。

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