なぜ横浜・野毛は「若者が殺到する街」になったのか? オシャレ再開発はもうウンザリ? 築古物件が育む600軒の多様性が生んだ「街の若返り」経済学とは
横浜・野毛地区は約600軒の飲食店がひしめき、来街者の約32%が20代以下と若年層に支持されている。低家賃と駅近の利便性が、個人店や実験的店舗の参入を促進。再開発エリアと異なる多様性を背景に、若者の都市消費行動の変化を支える構造的な若返りを実現している。
再開発を凌駕する低家賃効果

「若い人を集めるのは、オシャレな再開発より家賃が安いこと」
2025年6月7日、テレビ東京の「出没!アド街ック天国」が13年ぶりに野毛を特集した。番組は、街の変化に焦点を当て、その中で評論家・山田五郎が口にしたのが、冒頭の言葉である。
野毛は神奈川県横浜市中区にある歓楽街・飲食街だ。桜木町駅や日ノ出町駅から至近の立地で、JRと京急線に挟まれるように広がる。市中心部に位置しながら、昭和の情緒と雑多なにぎわいを色濃く残すエリアとして知られる。
かつては“上級者向け”とも形容された飲み屋街だった。昭和の空気が色濃く漂い、常連客で成り立つような文化が支配していた。だが近年、その風景は大きく変化した。現在は新旧合わせて約600軒の飲食店がひしめき、新たな出店も相次いでいる。若者が増え、女性客の姿も目立つようになった。
その背景にあるのが、
「家賃の安さ」
である。山田の指摘は、都市の再生において再開発よりも経済的な条件が影響することを示唆している。家賃の水準が変化を生む要因として、どれほどの役割を果たしているのか。その関係を考察してみたい。