「インバウンドの一部は悪質」 京都の“観光公害”止まらぬ現実――小泉氏“6000万人公約”に地元警鐘、「増えすぎるのも考えもんや」の声

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観光庁の訪日客6000万人目標が、自民党総裁選で小泉進次郎農相の公約として掲げられた。旅行業界は推進に動くが、京都市民の反応は辛らつである。観光公害の懸念が依然として根強い。

貴船神社へ向かう府道は連日渋滞

渋滞で乗用車が立ち往生する府道・上黒田貴船線(画像:高田泰)
渋滞で乗用車が立ち往生する府道・上黒田貴船線(画像:高田泰)

 観光庁の訪日客6000万人目標が自民党総裁選で小泉進次郎農相の公約に掲げられ、波紋を広げている。旅行業界は推進に動くものの、観光公害が続く京都市民の反応は辛らつだ。普通車の対向がやっとの道路で約10台の乗用車が立ち往生する。たまりかねた観光客が車と車のわずかなすき間をすり抜けて行く。貴船川に沿って山間を走る京都市左京区の京都府道・上黒田貴船線。9月下旬の休日、叡山電鉄貴船口駅から貴船神社までの約2kmであちこちに渋滞が起きていた。

 この府道は貴船神社に通じる一本道で、貴船口駅前と貴船神社を結ぶバスも運行する。もともと渋滞が目立つ場所だが、近年の訪日外国人観光客増加で余計に渋滞が深刻さを増している。貴船口駅前にいたタクシー乗務員は

「5分で着く場所に1時間かかるときもある。訪日客が増えすぎるのも考えもんや」

原因は府道の幅員が狭い場所で4mほどしかないことだ。しかし、周囲は片側が崖、もう片側が山の狭い谷に料理旅館が並び、用地買収の難しい国有林が広がる。市土木管理課は「予算の問題もあり、すぐに拡幅は難しい」と頭を痛めている。

 川の上で京懐石を楽しむ川床で有名な料理旅館街で渋滞が起きれば、従業員が車の誘導に回ることもある。仕事で料理旅館街へ来ていた京都市南区の会社員は

「小泉さんが訪日客を増やすと公約していたが、とんでもない。これ以上、観光客が増えたら、貴船がパンクする」

とうんざりした表情を見せた。

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