なぜ横浜・野毛は「若者が殺到する街」になったのか? オシャレ再開発はもうウンザリ? 築古物件が育む600軒の多様性が生んだ「街の若返り」経済学とは

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横浜・野毛地区は約600軒の飲食店がひしめき、来街者の約32%が20代以下と若年層に支持されている。低家賃と駅近の利便性が、個人店や実験的店舗の参入を促進。再開発エリアと異なる多様性を背景に、若者の都市消費行動の変化を支える構造的な若返りを実現している。

若年層流入を支える駅近立地

野毛エリアの位置(画像:OpenStreetMap)
野毛エリアの位置(画像:OpenStreetMap)

 野毛の若返りは、単なる印象論ではない。変化の実態を把握するには、まず横浜市全体の来街者構成を見る必要がある。「令和5年度 横浜市観光動態消費動向調査報告書」によれば、来街者の年齢・性別構成は以下のとおりとなっている。

●20代以下
・全体:31.7%
・男性:30.1%
・女性:33.1%

●30代
・全体:15.7%
・男性:16.8%
・女性:14.9%

●40代
・全体:14.2%
・男性:13.9%
・女性:14.4%

●50代
・全体:13.9%
・男性:13.9%
・女性:13.9%

●60代以上
・全体:24.4%
・男性:25.1%
・女性:23.6%

注目すべきは、20代以下の構成比の高さだ。特に女性においては、来街者の3人にひとりが20代以下という数字になっている。この比率は、若年層による消費行動と街の雰囲気の変化を裏付けており、野毛の若返りが実際に進行していることを示している。

 さらに、横浜市の同調査では、野毛・馬車道・桜木町を含むエリアの居住人口のうち、20~40歳代が全体の約53%を占めており、神奈川県全体の43%を約10ポイント上回っている。つまり、来街者の若年化という「動的な変化」と、居住者の若年化という「定常的な構造変化」が同時に進んでいる。野毛の変化は一過性のブームではなく、構造的な若返りと見るのが妥当だ。

 加えて、立地条件もこの傾向を後押ししている。JR根岸線桜木町駅と京急本線日ノ出町駅の両方から徒歩5分圏内にあり、横浜観光の中心地とも隣接。回遊性と交通利便性が高く、自然と滞在時間が延びやすい立地である。

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