「運転するな」「免許返納しろ」…じゃあ、高齢ドライバーはどう移動すればいいのか? 制度なき“正論”が生む交通弱者という構造的孤立
地方の高齢者が免許を返納すれば、移動手段の喪失による孤立が進む。公共交通は減少し、自治体の財政も逼迫。安全と生活維持の両立に向けた制度改革が急務だ。
「免許返納」の代償

高齢ドライバーによる交通事故が起きるたび、インターネット上では「免許返納」の声が大きくなる。だが、この単純な“正義感”が、地方都市を中心に静かに進行する交通からの排除を見えにくくしている。
都市部と異なり、自家用車が生活の前提となっている地域において、運転をやめるということは、文字通り生きる足を失うことに等しい。
しかも現在、肝心の代替手段であるはずの公共交通が、採算割れを理由に次々と縮小されている。バス路線は減り、鉄道は廃止され、タクシーの台数すら足りない。そうしたなかでなお免許を返納せよというのであれば
「彼らに何をしろというのか?」
この問いに、私たちは答えなければならない。それも感情や理想ではなく、地域の経済、交通インフラの供給体制、財政制約など、事実にもとづいて考えなければならない。