神戸ブランド失墜? 150億円「LRT」投資の賭け──大阪・京都に完敗する訪日客争奪戦を覆せるか
再開発13年目の観光再構築

神戸市が再整備を進める中央区のウォーターフロント将来構想に次世代型路面電車(LRT)が盛り込まれた。沈滞ムードが続く神戸復活にLRTは期待できるのか。
初夏の日差しに照らされて水面がキラキラと輝くなか、係留された遊覧船が出航を待つ。傍らに2024年にリニューアルオープンした神戸ポートタワー、その後ろに4月開館のジーライオンアリーナが見える。神戸市中央区の中突堤・新港エリア。幕末・1868(慶応3)年の開港以来、貿易港として日本の近代化を支えてきた場所が、徐々に変わろうとしている。
港湾機能は神戸沖に整備されたポートアイランド(中央区)、六甲アイランド(東灘区)に移り、フェリーターミナルや観光目的の遊覧船、クルーズ船乗り場になった。2012(平成24)年に再開発が始まり、ホテルや博物館、温泉など観光・エンタメ施設が次々に整備されている。1987(昭和62)年に造成された臨海公園のメリケンパークもリニューアルされた。
神戸市は訪日外国人観光客の獲得で苦戦しているが、4月から神戸空港(中央区)に国際線が就航、韓国、台湾、中国と結ぶ週40往復の運航が始まった。訪日客の受け入れ先として神戸市が期待するのが、神戸港の中突堤・新港エリアだ。
中突堤・新港エリアの名物にLRT検討

久元喜造市長は4月末の記者会見で市が2040年ごろまでに取り組む施策をまとめた新構想「神戸ウォーターフロントグランドデザイン」を発表した。中突堤・新港エリアを観光やイベント拠点とする内容で、緑豊かな散策路の形成、夜型観光の充実などさまざまな施策の中に、都心部の三宮地区と結ぶLRT整備が含まれている。
JR三ノ宮駅(中央区)から中突堤・新港エリアまでは約1km。エリア内も東西約2kmの距離がある。歩けない距離ではないが、年配の人や重いキャリーケースを引きずって歩くには少しつらい。そこで、移動手段としてLRTを導入し、神戸港の新名物にしようという発想だ。
LRTの導入自体はまだ構想段階だが、久元市長は記者会見で
「かなり魅力的な移動手段でないか」
と述べた。これまでより一歩踏み込んだ発言といえ、市役所内で前向きな検討が進んでいることをうかがわせる。