トヨタC-HR、なぜ7年で消えた?――「走りのSUV」に誰も振り向かなかった決定的理由! 「ニュルで鍛えた足回り」はどこへ行った?

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「ニュルで鍛えた足回り」という言葉がかつて自動車市場で強力な訴求力を持っていた。トヨタC-HRがその象徴となり、走行性能の価値が広く支持された。しかし、時代の変化とともに、走りの優位性は次第に消費者の関心を引きにくくなり、C-HRの失速がその証となった。

若年層支持と早すぎた失速

C-HR(画像:トヨタ自動車)
C-HR(画像:トヨタ自動車)

「ニュルで鍛えた足回り」は、かつて自動車の販売現場で強い説得力を持つフレーズだった。ドイツ・ニュルブルクリンクの過酷なサーキットで走行性能を磨いた車両という事実は、走りに妥協がない証とされ、走行性能を重視する層に強く訴求していた。

 この言葉は、長らくスポーツモデルやプレミアムモデルの個性を際立たせるキャッチとして機能してきた。しかし2010年代に入り、その意味合いが徐々に変化する。より幅広い車種にも使われるようになったのだ。

 象徴的だったのが、トヨタC-HRの登場である。スポーツタイプ多目的車(SUV)という一般ユーザー向けのカテゴリーでありながら、「ニュルで鍛えた足回り」を前面に打ち出したこのモデルは、若年層を中心に大きな支持を獲得。発売と同時にヒット商品となった。

 従来、走りの性能は一部の愛好家向けと考えられていた。しかしC-HRの成功は、走りが大衆市場にも響く訴求軸になり得ることを証明したように見えた。

 だがその後、C-HRは販売面で伸び悩む。国内市場では一代限りで姿を消す結果となった。初動のインパクトに比べ、走行性能へのこだわりは最後まで定着しなかった。

「ニュルで鍛えた足回り」という言葉は、果たしてもはや時代遅れなのか。かつては売れる言葉だったこのフレーズが、今もなお通用するのかどうか。スポーツモデルから一般車種へと拡張された背景をふまえつつ、その意義と限界を、C-HRの軌跡を軸にあらためて検証したい。

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