新幹線「6割引セール」は客寄せパンダ!? 「LCC化」戦略で販売力弱体化の懸念、根本需要の拡大につながるのか
JR東日本が秋田・山形・上越新幹線で最大60%割引のタイムセールを実施。コロナ後の減少した旅行需要を見据え、週末パス廃止と連動した大胆な価格戦略だが、移動の安価化だけで地方観光の持続的回復につながるかが問われている。
鉄道版LCC戦略

2025年5月、JR東日本が発表した新幹線のタイムセールが注目を集めている。対象は秋田新幹線「こまち」、山形新幹線「つばさ」、上越新幹線「とき」の3路線。通常の新幹線eチケット「トクだ値」を最大60%引きで販売するという、かなり思い切ったキャンペーンだ。
割引はインターネット予約サービス「えきねっと」の会員限定だが、値引き幅は大きい。例えば東京~秋田間の「こまち」の指定席は、通常1万7820円。それがタイムセールでは7120円になる。破格の水準だ。この施策の背景には、
「谷間期の需要喚起」
がある。ゴールデンウィーク明けから6月にかけては、鉄道各社にとって旅客が大きく落ち込む閑散期だ。この時期に空席のまま運行する、いわゆる「空気輸送」を避けたいという経営判断がある。そのため、あえて高めの割引率を設定し、乗車率を引き上げる狙いだ。
注目すべきはもう一点ある。今回のタイムセールは、JR東日本が「格安航空会社(LCC)型価格戦略」に踏み込んだ事例でもある。航空業界で一般的な
・ダイナミックプライシング
・タイムセール
を鉄道に応用し始めた。とくにLCCと競合する地方都市間の移動で、価格面の優位性を打ち出す動きといえる。