新幹線「6割引セール」は客寄せパンダ!? 「LCC化」戦略で販売力弱体化の懸念、根本需要の拡大につながるのか
JR東日本が秋田・山形・上越新幹線で最大60%割引のタイムセールを実施。コロナ後の減少した旅行需要を見据え、週末パス廃止と連動した大胆な価格戦略だが、移動の安価化だけで地方観光の持続的回復につながるかが問われている。
地域連携による消費拡大

また販売者の視点では、時間限定・数量限定の低価格設定は一時的な注目を集める手段になり得る。しかし長期的には価格に対する期待値を下げるリスクもある。ユーザーに
「適正価格での購入を避ける習慣」
がつけば、通常期の販売力を弱めかねない。したがって、こうした施策を一過性の在庫処分的販売から脱却させるには、地域社会と連携し、割引期間に合わせて受け入れコンテンツや消費機会を用意する必要がある。
交通事業者と観光事業者が
・販売戦略
・現地体験
を同期させなければ、割引効果は乗車時点で止まるだけだ。その後の消費波及は生まれない。現地訪問後に滞在時間を延ばし、支出を引き出し、再訪意欲を育てる連関設計が不可欠だ。これがなければ、安価な移動手段は地域の持続的成長にはつながらない。
JR東日本に求められるのは、今回の施策を一時的な販売促進で終わらせず、
「継続的かつ反復可能な運用モデル」
として確立することだ。その際、料金変動だけでなく、滞在先の体験提供との統合設計も必要となる。観光地側も移動の安価化を一方的に受け入れるだけでは不十分だ。
これを契機に自らの提供価値を見直し、訪問者に高い満足度と次回訪問の動機を提示できる準備を進めるべきだ。交通と観光の双方向の価値連鎖が形成されなければ、割引販売の効果は限定的に終わる。販売価格の変動で一時的な移動を生み出しても、持続的な経済効果につながらなければ、長期的な制度設計として成立しないだろう。