新幹線「6割引セール」は客寄せパンダ!? 「LCC化」戦略で販売力弱体化の懸念、根本需要の拡大につながるのか
JR東日本が秋田・山形・上越新幹線で最大60%割引のタイムセールを実施。コロナ後の減少した旅行需要を見据え、週末パス廃止と連動した大胆な価格戦略だが、移動の安価化だけで地方観光の持続的回復につながるかが問われている。
短期割引の波及条件

この新たな施策が地方観光の実質的な需要創出、特にタイムセール対象路線の沿線地域に結びつくかどうかが問われている。
現状、JALやANAなど航空各社も同様の割引販売を導入し、限定期間・限定価格で利用促進を図っている。例えばJALは5月13日・14日の2日間に、7月搭乗分の国内線タイムセールを実施した。しかし、これらの取り組みが地元の観光産業にどれほど波及効果をもたらしているか、実証的なデータはまだ十分に揃っていない。
それでも一部の旅行者の行動には変化が見られる。特定の時期に安く移動できるという認識が広がりつつある。移動の意思決定が価格の提示タイミングに左右される傾向も確認されている。だがこれは、すでに移動ニーズがある層に価格が引き金となって行動を促す
「顕在需要の取り込み」
に留まっている可能性が高い。潜在需要の掘り起こしには直結していないと考えられる。
短期間の割引施策は、運輸機関の座席稼働率を高める意図がある。しかし、その効果は
・販売期間
・便数
・競合手段との価格差
で大きく変わる。旅行動機が価格以外の要因、例えば滞在先での消費価値や体験価値に支えられていなければ、安い移動手段の提供だけでは旅先での支出拡大や再訪にはつながりにくい。