新幹線「6割引セール」は客寄せパンダ!? 「LCC化」戦略で販売力弱体化の懸念、根本需要の拡大につながるのか
JR東日本が秋田・山形・上越新幹線で最大60%割引のタイムセールを実施。コロナ後の減少した旅行需要を見据え、週末パス廃止と連動した大胆な価格戦略だが、移動の安価化だけで地方観光の持続的回復につながるかが問われている。
旅行単価上昇と客数減少

JR東日本の戦略転換は、タイムセールの導入だけにとどまらない。これまでの販売施策の見直しにも及んでいる。同社は2025年6月27日をもって、週末限定の乗り放題きっぷ「週末パス」の販売を終了する予定だ。
週末パスは、関東から東北南部までの広いエリアを土日2日間乗り放題で利用できる人気商品だった。だが、近年は販売枚数が減少していた。同様に、「首都圏週末フリー乗車券」や「東京フリー乗車券」も、同じタイミングで販売を終了する予定だ。
タイムセールの導入と従来の割引施策の廃止。一見すると矛盾したように見えるが、その背景には旅行需要の構造的な変化がある。観光庁が公表した「旅行・観光消費動向調査(2024年 年間・確報)」には、この変化がはっきりと表れている。
・国内旅行消費額:25兆1436億円(2019年比 +14.7%)
・宿泊旅行:20兆3325億円(+18.5%)
・日帰り旅行:4兆8211億円(+1.0%)
旅行単価(ひとり1回あたりの平均支出)も大きく上昇している。
・全体:4万6585円/人(2019年比 +24.7%)
・宿泊旅行:6万9362円/人(+26.0%)
・日帰り旅行:1万9533円/人(+12.7%)
数字だけ見ると、旅行市場はコロナ前より活況に見える。だが、実際に旅行をした人の数は減っている。
・国内延べ旅行者数:5億3995万人(2019年比 ▲8.0%)
・宿泊旅行:2億9314万人(▲5.9%)
・日帰り旅行:2億4681万人(▲10.4%)