路線バス会社の「96%」が赤字だった! なぜここまで追い込まれた? あなたの街は大丈夫? 低年収、長時間労働…構造不況からの脱却は可能か?
コストと需要の乖離

厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(令和3年)によると、日本人の平均年収は489万円。一方で、バス運転者の平均年収は404万円(83%)にとどまる。差額は85万円。月に換算すると約7万円の開きがある。
労働時間を見ても同様だ。全産業の平均が年2112時間なのに対し、バス運転者は2232時間(106%)。収入が低いにもかかわらず、拘束時間が長い職種といえる。
コストの現実も厳しい。南国交通(鹿児島県)のデータによれば、約300台のバスを動かすための軽油代だけで月に約4000万円、年換算で4.8億円にのぼる。これに車両の購入・維持費が加わる。新車なら1台2200万~2300万円はかかる。大型の中古車でも、改装費を含めると500万円程度が必要になる。
国土交通省「乗合バス事業の収支状況について」(2018年度)では、走行1kmあたりにかかるコストは全国平均で477円。費用の内訳は、
・人件費:57%
・燃料油脂費:8%
・車両償却費:6%
・修繕費:6%
・その他経費(一般管理費等):23%
労働者の高齢化も進んでいる。厚労省調査によると、2021年時点でバス運転者の平均年齢は53歳。筆者が地方都市のバス事業者に調査を行ったところ、平均56~57歳のケースも多く、人件費削減が困難な実態がある。さらに燃料費や物価も高騰しており、日常業務で使用する備品の価格も軒並み上昇。中古車は導入コストこそ低いが、老朽化の影響で修繕費がかさむ傾向も確認されている。
このように、バス事業は構造的に高コスト体質にある。それにもかかわらず、長時間労働で賃金が低く、将来性に乏しいとみなされる職業となっており、ドライバーの応募者は年々減少している。
利用者の減少も深刻だ。2019年と2022年を比較すると、路線バスの利用者数は約3割減少している。少子化と人口減少が続き、DX産業を中心としたテレワークの普及が進む現在、事業環境が好転する要素は乏しい。
黒字を確保している事業者も一部存在するが、それは例外的なケースにすぎない。主に都市部で、住宅地や工業団地と駅を結ぶ路線など、一部に限定されている。業界の大半はいまだ赤字体質のままである。