「船 = 地震に強い」は本当か? 東日本大震災から14年! 港湾の危険と津波からの生還術を考える

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「船は地震に強い」とよくいわれるが、それは本当なのか。東日本大震災では約7500隻の漁船が被災した一方、沖合の船は被害を免れた例も多い。地震発生時、船舶はどのようなリスクにさらされ、どのような対応が求められるのか。津波や港湾施設の被害、座礁リスクなど、船舶特有の課題に焦点を当て、海上安全対策の在り方を考える。

船の耐震性

震災被害のイメージ(画像:写真AC)
震災被害のイメージ(画像:写真AC)

 地震は日本をはじめとする地震多発地域に住む人々にとって、常に警戒すべき自然災害のひとつだ。陸上では建物の倒壊や津波といった二次災害が懸念されるが、船上ではどのような影響があるのだろうか。「船は地震に強い」とよくいわれるが、それは事実なのか。また、船上で地震が発生した際、乗組員や乗客はどのように対応すべきなのか――。

 東日本大震災から14年が経過した。2011(平成23)年3月11日に東北地方を襲ったこの地震は、最大震度7を記録し、多くの命を奪った。建物の倒壊や車両の流失など壊滅的な被害が発生し、その影響は陸上だけにとどまらなかった。宮城県では約9000隻の漁船のうち約7500隻が津波によって被災し、漁具を含め甚大な被害を受けた。一方、沖合に出ていた船のなかには津波の被害を免れたものも少なくない。

 一般的に、地震の揺れは海底を伝わるため、直接的に海水を介して船に強い影響を与えることは少ない。そのため、陸上のように建物が倒壊したり、地面が割れたりすることはなく、「船は地震に強い」といわれることが多い。その理由は主にふたつある。

 第一に、海水が地震の揺れを吸収することだ。地震の揺れは海底を通じて伝わるが、水中では振動が減衰するため、陸上ほど強い揺れを感じることは少ない。ただし、海底の地殻変動によって海水が押し上げられる場合、船は上下方向の揺れを感じることがある。

 第二に、船の浮力と復原性による安定性が挙げられる。船はもともと波の揺れに耐えられる設計になっており、多少の振動では転覆することなく姿勢を保つことが可能だ。これは、船体が浮力によって支えられていることと、転覆しないように復原性が備わっているためである。

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