「船 = 地震に強い」は本当か? 東日本大震災から14年! 港湾の危険と津波からの生還術を考える

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「船は地震に強い」とよくいわれるが、それは本当なのか。東日本大震災では約7500隻の漁船が被災した一方、沖合の船は被害を免れた例も多い。地震発生時、船舶はどのようなリスクにさらされ、どのような対応が求められるのか。津波や港湾施設の被害、座礁リスクなど、船舶特有の課題に焦点を当て、海上安全対策の在り方を考える。

船上で地震が発生したときの影響

震災被害のイメージ(画像:写真AC)
震災被害のイメージ(画像:写真AC)

 海底で地震が発生した場合、船に直接影響を与えるのは地震波ではなく津波である。地震波は海によって吸収されるため、船上では揺れをほとんど感じないが、津波は船舶に大きな影響を及ぼす可能性がある。ただし、津波の影響は船の位置によって異なる。海底で大きな地震が発生すると、断層運動によって海底が隆起または沈降し、これに伴って海面が変動することで四方八方に伝播する大きな波が津波である。

 津波は海が深い場所では時速800km/hというジェット機並みの速度で進むものの、波の高さは低い。一方、陸に近く海が浅い場所では速度が落ちる代わりに波の高さが増す。速度が落ちるといっても時速36km/hはあり、人間が徒歩で逃げ切れる速さではない。このため、船舶は津波が発生しない水深の深い場所へ速やかに移動することが基本的な対応となる。砕波、すなわち水深が浅くなることで波が前方へ崩れる現象は、津波の高さの4倍の水深で防げるとされる。船のサイズにもよるが、最低でも水深50m以上の場所へ避難することが求められる。また、船の安定性を保つためには、波に対して正面から進むことで転覆のリスクを抑えることができる。

 一方、船が港湾に停泊している場合、必ずしも深海に向かう対応が適切とは限らない。

「津波の前には潮が引く」

といわれることがあるが、断層の向きや海岸との位置関係によっては、引き潮をともなわずに最初から大きな津波が発生することもある。津波の進行速度が非常に速いため、地震発生後に出港を試みても間に合わず、津波と衝突するリスクがある。また、港湾内の浅瀬では津波によって波の高さが増すため、船が大きく揺さぶられたり、岸壁に衝突したりする危険がある。

 港内で津波の影響を受けた場合、船が桟橋に激突して破損する可能性が高い。迅速かつ適切な対応が求められ、地震発生直後の判断が生死を分けることになる。

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