パナマ運河を通過する船はなぜ「3割」も減少したのか? 「水位低下」が引き起こす知られざる危機をご存じか

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パナマ運河の水位低下はエルニーニョ現象が原因で、2023年から世界貿易に深刻な影響を与えている。船舶の通航制限が発生し、通常は36隻のところ一時的に24隻にまで減少した。このため、物流の遅延やコストの増加が懸念されている。持続可能な水資源管理が求められ、気候変動対策が急務となっている。

国際貿易に暗雲

パナマ運河(画像:Pexels)
パナマ運河(画像:Pexels)

 パナマ運河は、世界の貿易に欠かせない海上交通路のひとつだ。

 米国大陸の中央部を横断し、太平洋と大西洋をつなぐこの運河は、船舶の移動距離を大幅に短縮し、国際貿易の効率性を飛躍的に向上させてきた。

 しかし近年、この重要な航路は深刻な問題に直面している。それは、パナマ運河の

「水位」

が下がり、船舶の通航が制限されているということだ。

 2023年以降、この影響は顕著になり、徐々に回復へ向かっているが、どうしてこのような事態が発生したのだろうか。

パナマ運河の仕組みと水の重要性

パナマ運河(画像:Panama Canal Authority)
パナマ運河(画像:Panama Canal Authority)

 パナマ運河は、北米と南米を結ぶパナマ共和国に位置する運河で、大西洋と太平洋をつないでいる。長さは約82kmで、船舶が高低差を越えて航行できるように設計されている。この運河を利用することで、南米を回り込む必要がなくなり、

・航続距離
・運航期間

を大幅に短縮できる。

 運河の要所には、閘門(こうもん)と呼ばれる水門がいくつか設置されている。運河の最高地点は海抜26mで、閘門により前後を仕切った閘室という空間に水をためることで、船を上下させて通航する。

 最高地点にはガトゥン湖という大きな人造湖があり、湖やその周辺の水源から水を供給して、船舶の昇降に必要な大量の水を確保している。

 しかし、近年の気候変動により降雨量が減少し、ガトゥン湖の水位が低下している。この水位低下が、運河を通過できる船舶のサイズや重量に制限をかけ、通航に支障をきたすようになってきた。

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