「夜行列車消滅 = 正常な進化」は本当か? 新幹線礼賛論に異議あり! 鉄道オタクに決定的に欠けた「利用者視点」とは【リレー連載】ビーフという作法(5)
深夜移動の減少がもたらす影響
「深夜移動に対するニーズがない」
という意見を当媒体の記事のコメントで目にすることがある。しかし、夜行高速バスが未だに多く存在し続けているのは、バス業界にとって収益源であり、一定のニーズが存在しているからである。
特に郊外地域では、大都市圏との直通便がビジネスチャンスや観光の機会を向上させる重要な役割を果たしている。例えば、箱根地域の観光事業者は、コロナ以降、小田急ロマンスカーの小田原・箱根湯本への運行便数が減少し、その回復を強く求めていることからも、公共交通の「便の存在」が地域にとってどれほど重要かがわかる。
夜行列車が消えてしまうと、大都市への直通便が失われ、地域のブランドに悪影響を与える可能性がある。公共交通と地域のつながりを考えると、夜行列車は地域のブランディングに大きな影響を与えていることがわかる。
また、夜行列車がなくなることで、個人レベルでは深夜移動の選択肢が減り、都市間移動の効率が低下することになる。夜行列車を利用すれば、地方観光で朝から夜までアクティビティを楽しむことができる可能性が広がる。その非日常的な移動の楽しさや特別な体験が失われることも懸念される。
例えば、東京から大阪への1泊2日の出張では、のぞみ号を利用した場合、往復運賃は2万7740円(所要時間2時間30分、走行距離556.4km)となり、ホテル代1泊朝食付き1万円、日当2日間6000円を合わせると、合計支給額は4万3740円になる。一方、サンライズを利用すると、東京~大阪間の「ノビノビ座席」の運賃と特急料金を合わせた片道は1万2400円で、B寝台個室ソロは1万8470円、B寝台個室シングルは1万9570円となる。新幹線代とホテル代を合わせると、
「寝台列車の料金よりも高額」
となり、寝台列車を片道利用することで費用を抑えられ、職場にもメリットがある。こうしたメリットを損なうことが本当に正しい方向といえるのだろうか。