「夜行列車消滅 = 正常な進化」は本当か? 新幹線礼賛論に異議あり! 鉄道オタクに決定的に欠けた「利用者視点」とは【リレー連載】ビーフという作法(5)
夜行列車の消失は「自然な進化」ではない。新幹線や航空機の発展に圧されるなか、依然として需要がある夜行列車の役割を再評価し、公共交通としての進化を求める声が高まっている。非日常的な移動体験や時間の有効活用を重視したサービスの進化が、今こそ必要とされている。
公共交通「進化」の本質

公共交通は、生活者にとって
・物
・情報
・場所
を得るために不可欠なインフラであり、重要なツールである。昭和時代、公共交通は国家的な政策として
「シビルミニマム」(基本的な生活を維持するために必要不可欠な最低限度のインフラやサービス)
がテーマとなり、戦後復興や人口増加、経済成長を支えるために最低限の量を各地に整備することが優先された。しかし、インフラが整備され、バブル経済を経験した後、平成以降、そして令和時代のDX社会では、
「アメニティミニマム」(生活の質を向上させるために必要な最低限度の快適さや便利さを提供するインフラやサービス)
が国の政策テーマとなっている。現在、
・SDGs(持続可能な開発目標)
・DEI(多様性・公平性・包括性)
が国際的に掲げられるなかで、多様性を認め、あらゆる人々のウェルビーイングの向上を目指す社会において、単なる「速さ」や「効率化」だけを追求することが公共交通の進化であるとはいえない。夜行列車が果たしていた役割は、
・時間の有効活用支援
・非日常的な移動体験
・需要の多様性への対応
など、多岐にわたる。
「夜行列車がなくなるのは残念だけど、正常な進化というほかないのである」という見方は、新幹線や航空機の発展だけに注目し、その現象に偏った意見が多い。環境変化に対応する進化の本質を見極めずに語られている部分が多く、これには疑問を感じざるを得ない。