「夜行列車消滅 = 正常な進化」は本当か? 新幹線礼賛論に異議あり! 鉄道オタクに決定的に欠けた「利用者視点」とは【リレー連載】ビーフという作法(5)
改装車両で再生する夜行列車
小林氏の主張を箇条書きでまとめる。
・3月15日のダイヤ改正が近づき、新しい時刻表が書店に並び始めた。
・19時00分東京発の「のぞみ」博多行きが5月2日のみ運行され、驚異的な速達ダイヤで注目されている。
・夜行列車があった時代を知る人々にとって、東京発19時の列車で博多にその日のうちに到着することは夢のような話となっている。
・他の新幹線ダイヤでも、夜間帯に速達性の高い列車が増加し、夜行列車の必要性が低くなっている。
・例えば、新大阪19時54分発の「みずほ」、東京から函館や新青森へのアクセスも夜間に完結することができる。
・夜行列車「サンライズ瀬戸」「サンライズ出雲」は特別な選択肢として設定されており、実用的な移動手段としては利用されていない。
・新幹線の発展により、夜行列車の需要は消失し、飛行機や新幹線の速達性がその役割を果たしている。
・1968(昭和43)年の時刻表を参考にすると、夜行列車が必要だった時代と現在の便利さの違いが際立つ。
・新幹線網や航空網の充実により、夜行列車がなくなるのは進化と受け入れるべき現象である。
確かに、ブルートレインを中心に夜行列車は減少してきたが、山陰や四国を目指す「サンライズ」などは根強い人気があり、「WEST EXPRESS 銀河」のように従来の車両を改装して運行される夜行便も高い需要を誇る。この現象からもわかるように、夜行列車が完全に無駄で不要なものであれば、運行されることはないはずだ。
しかし、これらの人気列車は発売と同時に売り切れることが多く、持続的な需要も期待されている。この状況自体が鉄道業界の進化を示している。たとえばサンライズは、大手住宅メーカーのミサワホームが提供する「M-Wood」を採用し、木の温もりと曲線的なデザインを取り入れたインテリアで、夜行列車の新たな形を実現している。WEST EXPRESS 銀河は、車齢40年の車両を改装し、さまざまな座席タイプを導入して、さまざまなニーズに応じた利用を促進している。重要なのは、夜行列車を実現するための工夫であり、最初から
「夜行列車を運行するか否か」
を議論することが鉄道の未来を考える上で正しいアプローチとはいえない。もちろん、新造車両や改装車両にかかるコストについて懸念する声は多いだろうが、筆者はこれまでの連載で、そのために必要な工夫についても触れてきた。鉄道業界の厳しい経営状況を考えると、新幹線と飛行機の発展で夜行列車の役割がなくなったと一概に判断することはできない。小林氏は
「夜行列車がなくなるのは残念だけど、正常な進化というほかないのである」
と書くが、進化とは、環境に適応して変化することであり、環境の変化に応じた夜行列車の形態を考えることも十分に可能である。