東海道線「快速アクティー」廃止! 神奈川県の「支離滅裂」要望で鉄道弱体化? 鉄道行政のプロ不在が招いた悲劇を考える

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神奈川県鉄道輸送力増強促進会議が提出した要望リストは、地域住民の利便性向上を目指すものの、鉄道事業者との議論不足が目立つ。特に、東海道線の快速アクティー廃止問題を通じて、自治体と鉄道事業者の間にある情報格差と専門知識の欠如が浮き彫りになった。2023年のダイヤ改正で実現した停車駅増加に対しても、地域の真のニーズに応えるには、さらに深い議論が必要だ。

ダイヤ改正で実現した利便性向上

東海道線JRによる改善後時刻表(画像:北村幸太郎)
東海道線JRによる改善後時刻表(画像:北村幸太郎)

 この要望を受けて、JRは神奈川県鉄道輸送力増強促進会議に対して「長距離利用者のために設定した列車である」と説明するとともに、緩急接続による改善が行われたことを伝えた。改善内容は次のとおりである。

・2018年3月のダイヤ改正により、列車順序を変更。下りでは、快速アクティーの後に湘南新宿ライン快速(東海道線内各駅停車)が入り、藤沢で乗り換えて辻堂に行けるようになった。

・快速アクティーと普通列車の待ち合わせ駅を国府津から平塚に変更し、大磯、二宮の2駅も利用できるようにした。

・さらにその後のダイヤ改正で、東京方面から来る快速アクティーと、新宿方面から来る平塚行き普通列車(湘南新宿ライン快速)が戸塚駅に同時入線する形に変更。この接続により、新宿~小田原間の所要時間が23分短縮された。

・上記の施策により、湘南新宿ライン特別快速と合わせ、湘南新宿ライン快速から戸塚で快速アクティーに乗り継ぐ方法が可能となり、増発なしで新宿~小田原間で特別快速が毎時2本に増発されたのと同等の利便性が提供された。

・上りの一部時間帯では、大船駅で湘南新宿ライン特別快速と東京方面の普通列車の待ち合わせを実施し、快速アクティーに乗り換える方法と合わせて、増発なしで快速アクティーが毎時2本に増発されたのとほぼ同等の利便性が実現された。

このように、JRは実質的に通過駅への新規停車と同等の利便性を確保し、乗り継ぎを考慮した有効本数ベースでは、下りでは特別快速が1時間に2本、上りでは快速アクティーが1時間に2本と同等の利便性を確保した。

 しかし、神奈川県鉄道輸送力増強促進会議は引き続き、快速アクティーの停車要望を続けていた。最終的には、コロナ禍を受けた運行体系の見直しのなかで、JRから

「関係自治体からの快速アクティー停車要望を踏まえて(中略)2023年3月のダイヤ改正におきまして、快速アクティーを普通列車に置き換えることにより大磯・二宮・鴨宮駅の停車回数を増やしました」

と回答された。この結果、快速アクティーの辻堂、大磯、二宮、鴨宮への停車は実現したが、速達効果が最も高かった小田原市にとっては、少し複雑な結果となったことだろう。

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