「だいたいお前のところは!」運送業界を虐げる荷主のパワハラ、怒鳴られ15分直立不動で立たされるケースも! 日本郵便・違約金問題から見える荷主と運送会社の歪んだ関係とは
筆者が経験した元請の異常パワハラ

「未だにこんなことがまかり通っているんだな……」
日本郵便の違約金ニュースを聞いたとき、筆者(坂田良平、物流ジャーナリスト)が感じたことだ。これは運送業界に未だに残る悪しき慣習であり、今回明らかになった日本郵便のケースは氷山の一角に過ぎない。実際の配送を担う運送会社は、クライアントである荷主や元請け事業者に対して、圧倒的に弱い立場にある。
2011(平成23)年のことだ。当時筆者は運送会社の営業職だった。大手メーカーの物流子会社(以下、A社。A社が元請け事業者にあたる)の安全会議に出席した筆者は、この物流子会社の部長から
「だいたいお前のところは!」
と怒鳴られ、約15分間、直立不動で立たされたまま、罵詈雑言を浴びせられ続けた。今どき、こんなことするのか……当時の筆者は、通信業界、IT業界などを経て、15年ぶりに運送業界に戻ってきたところだった。
「クライアントが優越的な地位を濫用して、委託業者や下請けを虐げる」
という行為は、どの業界でも問題になってきたが、すでに多くの業界では改善が進んでいた。唾を飛ばしながら筆者を罵倒し続けるA社部長を見ながら、
「ああ、運送業界は未だにこういうパワハラがまかり通っているのか……」
と冷静に感じたことを覚えている。その後、筆者はさらにひどいパワハラを目にすることになる。
別の協力運送会社(B社)のトラックドライバーが、A社親会社の工場に集荷に行った際、待機中に喫煙をしてしまった。このことがA社の逆鱗に触れたが、驚くのはB社のクレーム対応内容と、それに対するA社の反応だった。
・問題を起こしたB社営業所長は部下数人を引き連れ、喫煙したドライバーの自宅に乗り込んだ。
・ドライバー本人に加え、妻と子どもが家にいたにもかかわらず、B社営業所長らは家捜しを行い、家にあったすべてのタバコと灰皿を強制的に廃棄させた。
・そのうえで、と子どもの前で、ドライバー本人に「禁煙をする」という念書を書かせた。
やっていることは反社会勢力と似ている。唖然とする筆者の前で、安全会議に参加していたA社の部長や役員らは、「素晴らしい!」と拍手をして称えた。