人口減少でも「鉄道」は必要なのか? 「利用者が多ければ必要」は間違い!? 廃止が招く“見えない社会的コスト”を検証する

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公共交通は単なる移動手段ではなく、地域経済の基盤であり、都市の発展を左右する要素だ。しかし、「利用者が多ければ必要、少なければ不要」という単純な議論では説明しきれない。人口減少が進む地方でも鉄道やバスの維持が模索される背景には、経済効果や社会的コストが密接に絡んでいる。赤字路線の存続は本当に無駄なのか。交通インフラと都市成長の関係を多角的に検証する。

なぜ「人口を増やせば鉄道ができる」という発想は単純すぎるのか

ローカル鉄道のイメージ(画像:写真AC)
ローカル鉄道のイメージ(画像:写真AC)

「どうしても電車が欲しいなら、まずやるべきことは人口を増やすべきだ」。一見もっともらしい主張だが、人口増加がそのまま公共交通の発展につながるとは限らない。

 都市の発展を考えるうえでカギとなるのは、

・人口密度
・都市構造

だ。単に人口が増えても、それが郊外に分散すれば公共交通の効率は悪化する。例えば、米国の多くの都市では人口増加が公共交通の発展につながらず、むしろ自動車依存が進んだ。一方、欧州の都市は人口密度を維持しながら公共交通を発展させてきた。重要なのは「人口を増やすこと」ではなく、

「どのように増やすか」

である。さらに、公共交通の発展には「初期投資」の課題もある。仮に人口が増えたとしても、鉄道やバス路線の整備には多額の投資が必要だ。そのため、一定の人口規模に達するまでは住民が自家用車に依存し、公共交通の整備は後回しになりがちだ。この

「タイムラグ」

を考慮せず、「人口が増えれば公共交通も発展する」と考えるのは楽観的すぎるだろう。

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