人口減少でも「鉄道」は必要なのか? 「利用者が多ければ必要」は間違い!? 廃止が招く“見えない社会的コスト”を検証する
公共交通は単なる移動手段ではなく、地域経済の基盤であり、都市の発展を左右する要素だ。しかし、「利用者が多ければ必要、少なければ不要」という単純な議論では説明しきれない。人口減少が進む地方でも鉄道やバスの維持が模索される背景には、経済効果や社会的コストが密接に絡んでいる。赤字路線の存続は本当に無駄なのか。交通インフラと都市成長の関係を多角的に検証する。
「赤字以上の社会的損失」とは何か

「赤字でも維持しなければならない公共交通があるのは、廃止すると赤字以上の社会的損失が発生する場合がある」。この指摘は極めて重要だ。
例えば、ある鉄道路線を廃止すれば、短期的には運営コストの削減につながるかもしれない。しかし、長期的に見れば、住民の生活圏が狭まり、消費活動の縮小を招く。企業の進出が難しくなれば、地域の雇用も減少する。さらに、高齢者の移動手段が失われれば、介護や福祉のコストが増大する可能性もある。
こうした影響を総合的に考えると、単なる赤字の問題では済まされない。公共交通の廃止がもたらす経済的損失は、短期的なコスト削減をはるかに上回る場合がある。この視点を欠いた交通政策は、地域の持続可能性を損なうリスクをはらんでいる。