人口減少でも「鉄道」は必要なのか? 「利用者が多ければ必要」は間違い!? 廃止が招く“見えない社会的コスト”を検証する

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公共交通は単なる移動手段ではなく、地域経済の基盤であり、都市の発展を左右する要素だ。しかし、「利用者が多ければ必要、少なければ不要」という単純な議論では説明しきれない。人口減少が進む地方でも鉄道やバスの維持が模索される背景には、経済効果や社会的コストが密接に絡んでいる。赤字路線の存続は本当に無駄なのか。交通インフラと都市成長の関係を多角的に検証する。

公共交通は「原因」か「結果」か?

路線バスのイメージ(画像:写真AC)
路線バスのイメージ(画像:写真AC)

 公共交通の存在意義を考える際、「需要があるから存在する」という単純な発想では不十分だ。公共交通は「地域経済の基盤」として機能しており、その整備は都市の発展に直結する重要な要素だ。

 また、「人口が増えれば公共交通が発展する」という考えも必ずしも正しいわけではない。都市の成長は、公共交通の整備が先行することによって促進されるケースが多く見られる。

 交通政策を考える際には、単なる収支の計算にとどまらず、「移動がもたらす経済効果」や「都市の成長との相互作用」を総合的に捉える視点が重要だ。公共交通は単なる輸送手段ではなく、都市の未来を形作る不可欠な要素と言える。

 最後に、SNSとテクノロジーを駆使して社会課題の発見と解決を支援するソーシャルスタートアップ・Polimill(東京都港区)が2024年4月に実施した「赤字の地域鉄道を公費で維持するべきか?」というアンケート調査の結果を紹介する。この調査は、社会デザインプラットフォームSurfvote(ウェブサービス)を通じて実施され、調査対象はSurfvoteのアカウントを持つユーザーで、最終的な有効票数は54票だった。以下に投票結果と一部コメントを紹介し、本稿を締めくくる。

●公費を投入して維持していくべきである(42.6%)
「赤字であろうが、その路線を利用しないと困る人もいる。他に交通手段があればいいが、他の路線もバスも自転車や車がない人もいる。公費を投入して維持していくべきであると思います」

●公費は投入するべきではなく、採算が取れない路線は廃線もやむを得ない(35.2%)
「採算が取れないならば路線を維持するコストがもったいないです。その周辺に住む方々の多数同意が取れるのであれば廃線するべきだと思う。国は財政難なので削れるところから削るべき」

●その他(14.8%)
「ケースバイケースだと思います。過疎化がかなり進み再興する気配が全くない地域で赤字のまま走らせてもコストがかさむだけになってしまうと思います。ただ町おこしなど副産物的に再興できる要素があればコストをかける価値があるときもあると思います」

●わからない(7.4%)
「そこに住んでいる住民、特に自家用車のない高齢者などのことを思うと公費を投入して維持するべきだと思う一方、赤字にしかならない電車を走り続けられるほど日本の経済に余裕はないとも思う。なのでどちらにも賛成ができなかったので、その地域ごとに慎重に検討するしかないと思う」

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