三菱自はなぜ「経営統合」を見送るのか? 独自路線で生き残れる? 78万台vs300万台……見送りのリスクとASEAN市場の未来を考える
経営統合参加のメリット・デメリット

2024年のグローバル販売台数を見ると、三菱自の販売台数は約78万台である。一方で、ホンダと日産はともに300万台を超えており、三菱自がこの3社の中で存在感を十分に発揮できない状況が浮き彫りになっている。こうしたなか、三菱自が経営統合に参加することで得られるメリットとデメリットを考察する。
メリットとしては、スケールメリットの活用が挙げられる。既存の生産工場や部品調達ネットワークを利用することでコスト削減が可能となり、経営効率を高めることができる。また、EVやソフトウェア定義型自動車(SDV)、自動運転といった先端技術の共同開発が進むことで、開発効率の向上が期待できる。さらに、経営統合によって新しい市場やセグメントへの進出が容易になることで、市場シェアの拡大も見込まれる。既存の生産工場を補完する形で現地生産能力が強化され、商品供給の迅速化も可能になるだろう。
一方で、デメリットも多い。経営統合によるブランド価値の低下が懸念される。複数ブランドが併存することで統一性が失われ、従来のブランドイメージが弱まる可能性がある。また、統合に伴う意思決定プロセスの複雑化により、迅速な経営判断が難しくなり、競争環境への即応性が損なわれるリスクも否定できない。
さらに、提携関係が競合他社との競争を不利にする場合も考えられる。具体的には、日系メーカー同士が市場シェアを奪い合う間に、
「中国メーカーなどの新興勢力に市場を浸食される恐れ」
がある。異なる企業文化を統合する難しさも課題であり、文化的な対立が統合効果を抑制する可能性もある。
これらの要素を総合すると、三菱自が経営統合への合流を見送った背景には、ブランド価値の希薄化や競争力低下への懸念があり、意思決定の複雑化や企業文化の違いといった課題が大きく影響したと考えられる。