三菱自はなぜ「経営統合」を見送るのか? 独自路線で生き残れる? 78万台vs300万台……見送りのリスクとASEAN市場の未来を考える
三菱自動車は、ASEAN市場で約3割のシェアを誇り、今後も成長を牽引する重要な地域として位置づけている。しかし、ホンダ・日産との経営統合を見送り、自社の独自路線を選択した背景には、競争激化やブランド価値の希薄化に対する懸念がある。自社の強みを生かしつつ、技術革新と市場適応力を維持するための戦略が問われる。
ASEANにおけるポジション

ASEAN市場は長年にわたり日系自動車メーカーの牙城であり、
「8割」
近いシェアを維持してきた。3社のグローバル販売台数に占めるASEAN販売比率を比較すると、ホンダと日産が1割程度であるのに対し、三菱自動車は約3割を占めており、ASEANが三菱自にとって主要マーケットであることは明白だ。
三菱自が2023年3月に発表した中期経営計画「Challenge 2025」では、ASEANおよびオセアニア地域を成長の原動力と位置づけ、経営資源を集中させる方針を示している。この計画に基づき、より多くの新商品を投入し、台数シェアと収益の拡大を目指している。
また、三菱自は日本でも2024年2月から販売を開始したピックアップトラック「トライトン」やMPV「エクスパンダー」などで、ASEAN市場において圧倒的なブランド力を持っている。一方、ホンダや日産も一定の販売シェアを維持しているものの、三菱自を経営統合に取り込むことでASEAN市場での販売力を強化したいという思惑があったと考えられる。
しかし、三菱自にとって経営統合による明確なメリットは乏しく、合流に値しないと判断した可能性が高い。さらに、今後ASEAN市場では
「中国EVメーカー」
の台頭が予想されており、競争が一段と激化する見通しだ。そのなかで三菱自は、ASEAN市場での優位なポジションを堅持し、自社の存在感を一層強化したいという意向が見え隠れしている。