日野データ改ざんで判明 環境問題と「内燃開発」に横たわる大いなる矛盾点
エンジン開発は終わらない

欧州委員会(EC)が、欧州グリーンディールの一環として提案する「Fit for 55」。この政策パッケージが目指す「2035年エンジン車全廃」が実現不可能なことは、3月6日の記事(BEV・FCVだけが本当に「脱炭素の切り札」なのか? 欧州主導「緑のルール」を冷静に考える)で述べた。
特に大型トラックは、
・高価なバッテリー
・積載荷重と航続距離の減少
を嫌って、長期的にエンジンを継続使用する予定だが、エネルギー源は軽油やガソリンではなく、バイオ燃料や水素などの再生可能燃料となるため、技術開発は今後も続く。
一般に量産工業製品の製造品質は確率管理であるから、不具合は理論的にゼロにならない。設計品質は対象技術の難易度による。過去の技術の延長線上にあれば、過去の知見を活用して、設計不具合をゼロにすることは不可能ではない。
最近、欧州の脱炭素関連の論文で
「Ambitious(野心的)」
という形容詞を頻繁に見る。
難易度の高い新たな技術開発に、不具合は付き物だ。過去の知見は無く、コンピューターが自動的に不具合を予測・解決することも無いが、ばらつきに対する余裕代を大きく取ることで不具合件数を減らす、あるいは不具合の程度を軽減することは可能だ。
求められる「最良の妥協点」

エンジニアひとりの知恵には限界があり、それだけでは目標には到達できない。開発費、開発期間、コスト、商品性などの制約も多く、「最良の妥協点」を決めなければならない。ここで判断を間違えたのが、冒頭のディーゼルゲートなのだ。
「Bad News First(悪い結果を先に話せ)」という言葉がある。開発組織にこの風土があれば、「三人寄れば文殊の知恵」で不具合を大幅に減らすことができ、
・妥協してよいこと
・決して妥協してはいけないこと
を判断するバランス感覚が生まれる。
某大統領のように「悪い話は聞きたくない」という風土で、エンジニアを孤立させてはいけない。風土改革は必要だが、一朝一夕には実現できない。「千里の道も一歩から」なのである。