日野データ改ざんで判明 環境問題と「内燃開発」に横たわる大いなる矛盾点

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先日話題となった、日野自動車のエンジン試験データ不正問題。再発防止の真因とは何か?

排ガス後処理の耐久性

カリフォルニア州大型車オムニバス規制。排出ガス基準、試験要件、遵守手順の更新(画像:ICCT)
カリフォルニア州大型車オムニバス規制。排出ガス基準、試験要件、遵守手順の更新(画像:ICCT)

 このようなばらつきを含めて、年々厳しくなる排ガス規制やCO2規制を満足するためには、エンジンの排ガスに含まれる、各種汚染物質を除去する「排ガス後処理装置」が必須となる。現在の大型ディーゼルエンジンが装着している排ガス後処理装置の代表事例を図に示す。

 事例の後処理装置は4種、5個の触媒を持つ。

・部品設計
・搭載場所の確保
・システム制御

などの技術だけではなく、高額なシステムコストも課題だ。さらに、排ガスの制御部品は機能劣化に対する耐久性も要求される。

 現在、米国の大型ディーゼル車は43万5000マイル(69万6000km)、10年、2万2000時間の耐久寿命、いずれかが法的に要求される。

 日野自動車のプレスリリースでは

・認証試験である排出ガス性能の劣化耐久試験において……排出ガス後処理装置の第2マフラーを途中で交換し試験を継続した
・再試験結果から、経年変化により排出ガスの規制値を超過する可能性があることも判明

と記載されており、このような結果で型式認証を取得することの違法性は明白だ。

厳格化する世界の排ガス規制

カリフォルニア州大型車オムニバス規制。排出ガス基準、試験要件、遵守手順の更新(画像:ICCT)
カリフォルニア州大型車オムニバス規制。排出ガス基準、試験要件、遵守手順の更新(画像:ICCT)

 米国環境保護庁(EPA)は2022年3月、ディーゼルとガソリン大型車向けの2027年規制強化案を公表した。図はEPAに先行するカリフォルニア州大気資源局(CARB)の強化案で、NOx規制値が強化されるとともに、耐久寿命も大幅に延長される。

 欧州では1992(平成4)年の規制導入以来、段階的に強化されてきたが、大都市の大気汚染が改善されないため、2016年から実走行時排ガス(RDE)規制を導入し、2026~2027年からはさらに厳しいEuro7規制に移行する予定で、原案は2022年3月~4月に公表される。

 排ガス規制が強化される一方で、CO2低減(燃費向上)に対する要求も厳しくなる。CO2低減のためにはエンジンの効率を向上させる必要があるが、その結果、排ガス温度が低下する。排ガス後処理装置に用いられる触媒は、一定温度(活性化温度)に達しないと十分に機能しない。これは二律背反(互いに矛盾するふたつのものが存在すること)の関係だ。

 今後の規制強化により、米国の認証試験法(FTP)では、走行開始後5分以内に触媒が活性化しないと規制値を満足できなくなる。このため排気後処理システム上流に電気ヒーターを追加することも検討されている。

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