日野データ改ざんで判明 環境問題と「内燃開発」に横たわる大いなる矛盾点
「意図的」だった偽装

トヨタ自動車の連結子会社で、トラック・バス国内最大手の日野自動車は2022年3月4日、エンジンの
・排ガス
・燃費性能
に関する国の認証試験「型式認証」で、データを改ざんする不正行為があったため、該当車種の出荷停止を公表した。
型式認証とは、自動車製作者が新型車などの生産・販売を行う場合に、国土交通大臣に申請・届け出を行い、保安基準への適合性などについて審査を受けることだ。
今回の結果について、日野自動車はプレスリリースで
・現場での数値目標達成やスケジュール厳守の圧力、等への対応が取られていないことが問題の背景
・組織変更や業務プロセスの見直し等、企業統治の改善と、従業員の意識改革への取組みを進めている
と説明している。
かつての自動車関係の大型不正事例としては、
・三菱リコール隠し事件(2000年)
・独フォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正事件(2015年。以下「ディーゼルゲート」)
などがよく知られている。
VWは大規模なリコールと高額な制裁金に加えて、関連会社の経営陣が逮捕・告発された。また事件を契機に、欧州乗用車のディーゼルエンジンシェアが急落し、欧州の自動車会社の多くがCO2削減目標達成のため、電動化に軸足を移した。
日野の小木曽聡社長は、元トヨタ自動車のエンジニアだ。そのため、トヨタ自動車流の「人を罰しても不具合は無くならない。不具合を出せないプロセスに変える」を採用し、再発防止策を実行するだろう。
だが、日野自動車はトヨタ自動車の連結子会社といえ、別会社であり、企業風土が異なる。トヨタの社員全員が共有する「トヨタの良識」が日野の全社員に浸透するには10年かかる。それまではどうするのか――これが真の課題だろう。
通常の問題解決では、「なぜ」を5回繰り返して真因分析を行う。日野の場合は「意図的」な不正行為であるので、不正行為の事実関係は明確だが、それは要因であって真因ではない。前述のプレスリリースには
・開発プロセスとその管理法が再発防止
と記載されている。では、再発を防止すべき真因は何なのだろうか?