冷凍食品ブームで「倉庫」がパンク寸前! 主要都市の占有率「90%台」という厳しい現実、物流網ひっ迫で解決策はあるのか?

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拡大する冷凍食品ブームの影響で、冷凍冷蔵倉庫が深刻な問題を抱えている。倉庫は常に満杯状態が続き、老朽化やフロンガス規制といった課題を抱えているが、建て替えも簡単には進まない。このままだと、冷凍食品の供給にも影響が出る恐れがある。

足りない冷凍冷蔵倉庫

冷蔵倉庫(画像:写真AC)
冷蔵倉庫(画像:写真AC)

 93.5%――これは、2024年11月時点で、日本国内の冷凍冷蔵倉庫が集まる主要12都市(札幌、仙台、船橋、東京、川崎、横浜、名古屋、大阪、神戸、広島、松山、福岡)における庫腹(こふく)占有率を示す数値だ。「庫腹」という言葉はあまり馴染みがないが、冷凍冷蔵倉庫の収容能力に対して、実際にどれだけの荷物が収容されているかを示す指標だ。つまり、「ほぼ満杯状態」が続いているということだ。近年は多少の上下はあるものの、庫腹占有率は90%台で推移している。特に輸入冷凍食品は、コンテナ船で輸送されるため、冷凍冷蔵倉庫は湾岸部に集まる傾向にある。東京都中央区豊海町地区など「冷蔵庫団地」と呼ばれるエリアが、その代表例だ。

 冷凍冷蔵倉庫が不足しているため、冷凍冷蔵食品(あるいは食材)を複数の倉庫に分散して保管するメーカーや問屋が現れている。分散先は、埼玉県内から栃木、群馬、さらには福島県内など、東北地方にまで及ぶこともあるという。なかには、10か所以上の冷凍冷蔵倉庫に荷物を保管している事業者もいるそうだ。

 当然ながら、これは効率が悪い。例えば、東京港に届いた輸入冷凍食材を、わざわざ福島県内の冷凍倉庫まで輸送して保管し、その後、再び東京近郊の加工工場へと運ぶケースがある。また、冷凍食品を出荷するたびに、複数の北関東の倉庫を巡りながら集荷を行い、物流センターで集積してから、業務用や量販店用として出荷するケースも少なくない。
 本来、荷物はひとつの倉庫に保管されている方が都合がよい。さらに、冷凍冷蔵食品の流通においては、冷凍冷蔵食品を加工する工場や、冷凍冷蔵食品や食材を輸送する際に必要な冷凍冷蔵装置を備えたトラックを多数保有している運送会社が、冷凍冷蔵倉庫の集積地区周辺に集まる傾向がある。

「物流の2024年問題」が深刻化し、トラック輸送リソースがひっ迫する今、空いている冷凍冷蔵倉庫を求めて、トラックが「横持ち(工場・店舗・支店などの社内の拠点間で、商品移送を行う場合の輸送)」のために走らされる状況が大きな課題となっている。冷凍冷蔵倉庫不足が、冷凍冷蔵食品を輸送するコールドチェーンの足かせとなりつつあるのだ。

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