距離がつくる旅情 欧州移住経験者が語る心の変化【リレー連載】現代人にとって旅情とはなにか(3)

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旅の距離が生む感動や癒やし、非日常が与える心のリセット効果は、ただの娯楽を超えた価値を提供する。国内外を問わず、旅がもたらす解放感は、年間6兆円超の観光経済を支える原動力でもある。本稿では、「距離」が鍵となる旅情の本質に迫り、その可能性を経済と心の両面から探る。

旅情の本質を探る心のリセット

旅行と移住を通して気づいた旅情の本質(画像:写真AC)
旅行と移住を通して気づいた旅情の本質(画像:写真AC)

 ふと、自分の経験を思い出した。

 以前、欧州を旅行して、2週間にわたる非日常を体験したことがある。海外旅行はほとんどしたことがなかったが、初めて友人が住む欧州へ個人で旅に出た。日本から遠く離れた地に移動し、初めて目にする景色に心が揺さぶられた。慣れ親しんだ日本文化を離れ、異国の文化に感動し、美味しい料理にも喜びを感じた。まさに、旅情を存分に味わった時間だった。

 その後、その旅行の経験が忘れられず、実際にその土地に移住した。すると、最初は新鮮だった異文化や街の景色、美味しい食事も次第に日常になった。理解できなかった言語も、時間が経つにつれて少しずつわかるようになった。そうして、旅行中に感じた旅情は自然と薄れていった。その中で、自分の中に変わらず残った心地よさは、

「人との距離感」

だった。旅行中はいろいろなものに旅情を感じていたと思っていたけれど、実際に自分の心に旅情を与えていたものだけが心に残った。そのことを思い返して出た結論は、旅情の本質とは

「本来喜びや安心を感じさせるものに反応できるよう、自分の心をリセットすることではないか」

ということだ。だからこそ、旅情の感じ方は人それぞれ異なるのだ。

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