距離がつくる旅情 欧州移住経験者が語る心の変化【リレー連載】現代人にとって旅情とはなにか(3)
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旅情の変化と現代人の感覚

現代社会は効率性と合理性が求められる時代だ。私たちは日々の生活で時間を有効に活用し、成果を最大化することを優先するあまり、心の豊かさや感情の触れあいを犠牲にしがちである。しかし、旅はそんな現実から一時的に解放される貴重な機会を提供してくれる。
旅情とは、単なる移動や観光にとどまらず、未知の地を踏みしめ、そこで出会う人々や文化、風景と触れ合うことで生まれる深い感情のことだ。旅先での小さな発見や、異なる環境の中で感じる自分自身の変化は、合理性を超えた価値を私たちに与えてくれる。
このリレー連載「現代人にとって旅情とはなにか」では、現代人がいかにしてこの非合理的な旅情を大切にし、日常生活に取り入れていくことができるのかを探求する。さまざまな視点から旅の魅力をひもとき、心の豊かさを取り戻すヒントを提供することで、読者に新たな旅の楽しみ方を提案したい。これからの連載を通じて、旅の本質に迫り、ともにその価値を再発見していこう。
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「現代人にとって旅情とはなにか」を考えたとき、どのような表現が適切か悩んでしまった。少し古臭い感じがしたり、現代の感覚にはそぐわないようにも思える。もっと現代的な言い回しはないだろうか――。
・非日常
・景色
・懐かしさ
・駅弁
など、いずれも旅情の要素として考えられるが、旅情を端的に表現する完璧な言葉には思えない。
そもそも旅情とはどのような意味なのだろうか。goo辞書では
「旅に出て感じるしみじみとした思い。旅の情趣。たびごころ」
と説明されている。意味は理解できるが、現代人にとっての旅情がどういうものなのか、なかなかピンとこない。
迷っているなかで、ネット上で『「青春18きっぷ」ポスター紀行』という本を見つけた。そのなかで目を引いたのが、帯に書かれている
「旅情とは、距離がつくる。」
というキャッチコピーだった。