高速道路無料化、なぜこんなに遅い? 2115年まで待つ? その理由と課題を考える

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高速道路無料化、実現は遠い未来なのか。1963年に名神高速が開通して以来、半世紀以上の時を経て、無料化の計画は何度も延期され続けている。2023年、政府はその実現を「2115年」に先延ばし。現状と課題を探る。

高速道路無料化の成果と課題

メリット・デメリットのイメージ(画像:写真AC)
メリット・デメリットのイメージ(画像:写真AC)

 民主党の高速道路無料化計画は、途中で中断されたが、その実施を通じて、高速道路を無料で通行できることのメリットとデメリットが明確になった点では一定の成果があった。ここでは、具体的なメリットとデメリットを見ていこう。

●メリット
・流通コストの削減
・地域経済の活性化
・サービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)の充実

 流通コストの削減と地域経済の活性化は、民主党の目指していた最大の目的でもあり、流通業者の支出を抑えると同時に、商品の販売価格の引き下げにもつながる。高速道路が無料になることで、長距離ドライブをする人々が増え、その結果として地域への支出が増えると考えられる。これにより、SAやPAにも立ち寄る機会が増え、これらの施設が充実することにもつながる。

●デメリット
・渋滞の増加
・高速道路の維持費確保
・他の公共交通への影響

 デメリットの最も大きな懸念は、やはり渋滞の問題だ。実際、無料化社会実験が行われた路線では、交通量が

「1.5~2倍」

に増加した。社会実験は一部区間に限定されていたが、全路線・全区間で無料化が進むと、渋滞の増加は予想以上に深刻なものになるだろう。

 また、高速道路の通行料を無料にすることにより、これまで通行料で賄っていた高速道路の維持費をどのように確保するかも大きな課題となる。高速道路の維持にはかなりの費用がかかるため、他の財源を充てるのは現実的に難しい。

 さらに、高速道路が無料になると、鉄道や飛行機、バス、フェリーなどの公共交通の利用者が減少することが予想される。これにより、公共交通の本数が減ったり、廃止されたりする可能性がある。車を運転できる人や車を所有している人には影響が少ないが、車を運転できない人や車を所有できない人にとっては、大きな問題となる。

 高速道路の無料化にはメリットとデメリットがともに存在しており、無料化を進めるためには、デメリットを解消するか、少なくとも軽減するための政策が求められる。

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