東洋の精神性とアドベンチャーツーリズム【短期連載】なぜいま岡倉天心なのか(3)

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アドベンチャー・ツーリズムが注目を集めるなか、岡倉天心が守ろうとした日本の文化財、特に「茶の湯」が再評価されている。この旅行スタイルでは、伝統文化の深い精神性を体験でき、地域の自然や文化を学びながら自己変革を促すことができる。また、観光業の成長にも貢献しており、2023年にはアドベンチャー・ツーリズム市場が76兆円規模を超えた。日本では金沢や東北海道などで新たな文化体験が提供され、外国人観光客の関心を集めている。

求められる地域資源の活用

「金沢能登広域の文化と自然をつなぐ富裕層アドベンチャーツーリズム造成事業」(画像:国土交通省)
「金沢能登広域の文化と自然をつなぐ富裕層アドベンチャーツーリズム造成事業」(画像:国土交通省)

 国土交通省北陸信越運輸局は、2022年に「金沢能登広域の文化と自然をつなぐ富裕層アドベンチャーツーリズム造成事業」を実施した。

 地域の独自性を生かした体験価値創造のためのコンテンツ磨き上げの対象のひとつとなったのが、

「和菓子作り体験 + 茶室での本格茶道体験」

だ。金沢市立中村記念美術館付属の旧中村邸で、季節ごとに合わせた和菓子作りを体験した後、茶室「耕雲庵」で茶の先生がたてたお茶と一緒に和菓子を楽しむ体験だ。

 耕雲庵は、江戸末期の豪商、木谷藤右衛門が京都の数寄屋大工に建てさせた茶室だ。天心が称揚した「茶の湯」の深い精神性が、アドベンチャー・ツーリズム時代のコンテンツとして生かされようとしているのである。

 トヨタグループのアトコ(愛知県名古屋市)が企画した愛知県犬山市の観光コースにも、「日本庭園有楽苑」にある国宝茶室「如庵」の特別観覧が組み込まれている。「如庵」観覧を含む観光コンテンツは、観光庁の「地域観光新発見事業」の重点支援事業にも選ばれている。

 また、姫路城西御屋敷跡庭園「好古園」にある茶室「双樹庵」では、美しい庭を眺めながら抹茶とお菓子を楽しむことができ、外国人観光客が注目するスポットとなっている。

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