北陸新幹線開業27年! 長野県「佐久市」が繁栄し「小諸市」が衰退した理由とは?
北陸新幹線が開業した後、佐久市は交通の便利さを活かして繁栄した。しかし、一方の小諸市は衰退していった。小諸は特急停車駅を失ったため、観光客が大幅に減少し、懐古園の来場者数は100万人から約18万5000人にまで落ち込んだ。佐久市は2021年の商圏調査で23万9303人という高い地元滞留率を示しているが、商業は特定のエリアに集中しており、全体の商店数は38%も減少している。両市の運命は交通と商業に大きく依存しており、今後の動きが注目される。
新幹線喪失からの再生
一方、新幹線の誘致に失敗して衰退したとされる小諸市では、再生に向けた取り組みが本格化している。この再生の特徴は、市民と行政の協力による都市再生の努力にある。
市民レベルでは、2019年に地域住民の危機感から生まれた「おしゃれ田舎プロジェクト」がきっかけとなった。このプロジェクトにより、かつてシャッター通りになっていた駅前の相生町商店街に新たな活気が生まれ、1階の店舗スペースがほぼ満室になるまでに復活した。
また、行政も約10年かけて「コンパクトシティ構想」を着実に進めてきた。2021年8月には、総事業費約26億円をかけた複合型中心拠点施設「こもテラス」がオープンした。この施設には、スーパー「ツルヤ小諸店」(一時閉店後の再開)や公共交通ターミナル、市民活動・ボランティアサポートセンター、高齢者福祉センターなど、さまざまな都市機能が集約されている。
この構想は、2040年には約3万2600人に減少すると予測される人口や、42.8%に達するとされる高齢化率を考慮したものだ。高齢者が中心市街地で生活に必要な用事を一度に済ませられる環境を整えることで、市民の利便性を高め、地域全体の活性化を図っている。
実際、中心市街地には市立図書館や市民交流センター、新庁舎、医療センターなどの公共施設が集まり、コンパクトな都市構造が形成されつつある。さらに、予約制の相乗りタクシー「愛のりくん」の運行時間を拡大し、周辺地域とのつながりを強化する取り組みも行われている。
このように、小諸市は新幹線という高速交通網を失った代わりに、歩いて暮らせるコンパクトな街づくりという新たな都市像を模索している。